寺院諸法度

寺院諸法度について

寺院諸法度（じいんしょはっと）は、江戸時代において、江戸幕府が仏教寺院に向けて制定した法令の総称です。この法律の正式な呼び名は存在せず、文献によっては「諸宗寺院法度（しょしゅうじいんはっと）」や「諸宗諸本山法度（しょしゅうしょほんざんはっと）」といった名称も見受けられます。

寛文5年（1665年）、寛文印知が行われ、寺院領の安堵に加え、全ての宗派・寺院・僧侶を対象とした共通の規範である「諸宗寺院法度」が導入されました。これにより、寺院間の上下関係を明確にし、僧侶同士の訴訟問題に対応することが試みられました。

背景

江戸幕府は、開幕初期から戦国時代によって混乱した寺院に対する管理を強化しようと努めていました。模索する中で、寺院諸法度が設けられ、各宗派に適用される統一的な法令が必要とされたのです。特に、江戸幕府が慶長から元和の時期に各大寺に対して「寺院法度」を定め、さらに寛文の頃には「諸宗寺院法度」と共通の法律を制定するに至りました。

宗門改役と寺社奉行

寛永17年（1640年）には幕府が宗門改役を設け、寺社への統制体制を整備しました。寺社奉行が正式に設置され、寺院の規模や運営に関する指導や、僧尼の職務や人事に対する規制が強化されました。また、祭りや法会などの仏事に対しても統制が行われました。

さらに、幕府は将軍の判物や朱印状を使用して有力寺社に対し土地を安堵・付与し、寺院経営を安定させるための施策が講じられました。この過程で、キリスト教禁止も厳格に行われ、「切支丹制札」が全国に掲示され、その関連で宗旨人別帳（宗門改帳）が作成され、檀家制度の実施が促進されたのです。

地域の影響と支配

さらに、地方の大名や旗本も幕府の例にならい、領地内の有力寺社に対して土地を与え、境内で樹木の伐採を禁止するなど、寺社を保護しました。このことで、地域の寺社はでは領主による支配統制を強く受けることになります。そのため、寺院は近世の支配体制において、民衆支配の中核となる存在に変貌していきました。

本末制度と禅宗の法度

幕府はさらなる統制策として、本末制度を導入し、全国の寺院を宗派ごとに体系化しました。これは一部の寺院において強制されることもあり、紛争の原因ともなりましたが、宗教行政において重要な施策となりました。

特に禅宗においては、様々な法度が制定されています。その中には、曹洞宗法度（1612年）、勅許紫衣の法度（1613年）、五山十刹諸山法度（1615年）などがあります。五山十刹諸山法度では新たに江戸に「（金地院）僧録」が設けられ、以心崇伝が任命されましたが、その権限は制限され、五山派のみに適用されることとなりました。

結論

これらの寺院諸法度は、江戸幕府が寺院を管理し、仏教の教団を統制していくための重要な手段でした。こうした法令群は、江戸時代の宗教行政や寺院の在り方、さらには民衆との関係に深く影響を及ぼしたのです。

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