対人関係療法

対人関係療法（IPT）とは

対人関係療法（Interpersonal Psychotherapy: IPT）は、1970年代から1980年代にかけて、主にうつ病の治療を目的として開発された短期の心理療法です。この治療法は、精神医学における対人関係理論を基盤としており、特にハリー・スタック・サリヴァンの理論が大きな影響を与えています。当初は成人のうつ病患者を対象とした個人療法でしたが、その有効性が認められるにつれて、若年成人、老年期、双極性障害、摂食障害、産後うつ、夫婦関係の問題など、幅広い対象と症状に対応できるよう発展してきました。

対人関係療法は、精神力動的なアプローチを基礎としていますが、短期であること、構造化された面接や評価ツールを使用する点において、認知行動療法の要素も取り入れています。また、心的外傷後ストレス障害（PTSD）に対応したマニュアルも開発されており、その適用範囲は広がり続けています。

対人関係療法の歴史

対人関係学派は、1930年代から1940年代にかけて、アメリカのワシントン・ボルチモア地域を中心に発展しました。アドルフ・マイヤーがその基盤を築き、ハリー・スタック・サリヴァンが理論構築に大きく貢献しました。この学派の理論に基づき、対人関係療法が開発され、うつ病に対する有効性が研究されました。1986年には、対人関係療法のマニュアルが作成され、その後の臨床応用を促進しました。

診療ガイドラインでの評価

対人関係療法は、世界保健機関（WHO）のmhGAPガイドラインや、アメリカ[[精神医学会]]（APA）のうつ病治療ガイドラインで推奨されています。英国国立医療技術評価機構（NICE）のガイドラインでは、軽度から中等度のうつ病に対して、認知行動療法と並ぶ有効な心理療法として推奨されています。また、中等度から重度のうつ病に対しては、抗うつ薬と併用することで、より高い治療効果が期待できるとされています。

摂食障害の治療においても、対人関係療法は有効な選択肢の一つとして挙げられています。神経性過食症や過食症に対しては、認知行動療法と同等の効果があるとされ、むちゃ食い障害に対しても長期的な有効性が認められています。

研究によるエビデンス

系統的な調査により、対人関係療法は適応障害の治療にも有効であることが示されています。また、予備研究では、心的外傷後ストレス障害（PTSD）の治療において、対人関係療法が持続エクスポージャー療法よりも高い反応率を示す可能性が示唆されています。さらに、別の研究では、産後うつのリスクを低下させる効果も確認されています。

対人関係カウンセリング

対人関係カウンセリング（IPC）は、対人関係療法の考え方を基にした、より短期のカウンセリングです。主に軽度のストレスや精神的な問題を抱える人々を対象としており、6回以下のセッションで実施されます。専門家だけでなく、上級看護師などの医療従事者も用いることができ、離婚、死別、異動、過労などのストレス要因に対処するのに役立ちます。

セルフヘルプ

対人関係療法およびカウンセリングの考え方は、セルフヘルプツールとしても活用されています。関連するワークブックや書籍を活用することで、自己理解を深め、対人関係の問題を解決する手助けとなることが期待できます。

まとめ

対人関係療法は、うつ病をはじめとする様々な精神疾患や問題に対して有効な治療法として、その有効性が広く認知されています。心理療法に対する選択肢の一つとして、今後も重要な役割を担っていくと考えられます。

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