対馬銀山

対馬銀山（つしまぎんざん）

対馬銀山は長崎県対馬市厳原町の樫根地区近くに位置する、日本最古の銀山遺跡として知られています。この銀山の歴史は古く、記録によると674年に天武天皇の時代、対馬島司の忍海造大国が当地で産出された銀を朝廷に献上したことから始まります。これが対馬銀山の名称とその後の発展の基礎を築くこととなりました。

特殊な訳語である「大宝」という元号は、701年に再度献上された金の成果として制定されたものですが、実はこの金の供給に関しては『続日本紀』で異議が唱えられています。記録によると、現地の開発者が偽情報を流した可能性があるとのことです。平安時代に入ると、対馬からの貢納は鎮守府に対して銀890両という定めが記載され、対馬の銀山の重要性が改めて裏付けられました。

対馬銀山の精錬技術として広く採用されていたのは、灰吹法という方法です。これは、大江匡房の記録『対馬貢銀記』に基づくと、松の樹を炎で数十日間焼き、その灰を使って銀を精錬していたとのことで、特に独特な工程が行われていた事実が浮かび上がります。

また、銀塊と鉛の分離法も、自然銀の存在を利用して改良が進められていったと考えられます。当初は自然銀の顕著な形状が視認可能であったため、採掘職人たちはこの銀を見逃さず、独自の工程を用いて大量の鉛を松の樹灰と融合させることで、より高純度の銀を抽出することに成功しました。

採掘作業は、当初安定した規模を持つ坑道から始まり、二、三里（約1,500m）前後の距離で行われていました。作業は役割分担されており、採掘役、照明役、運搬役がチームとして形成されていました。また、排水作業では数百人規模の労働者が手作業で協力する必要があり、非常に多大な人手が必要でした。

官営の銀山であったため、得られた銀は全て国税として都に納入され、労働者の給料は大宰府が負担していた点も興味深いです。また、輸送中の事故を防ぐために、非常に長い綱（約150m）が備え付けられ、船による輸送体制を強化していた点も印象的です。

946年の『宋史』によると、983年に渡宋した僧侶奝然は皇帝に日本の状況を説明した際、「東奥州産黄金 西別島出白銀」と、日本の貢納制度における対馬の位置付けも語られています。

その後、対馬銀山は11世紀に刀伊による襲撃を受け、その結果として鉱山が焼失する事態にも見舞われました。しかし、江戸時代に入ると、対馬藩が銀山の経営を再開し、さらには町人主体の経営に移行するなど、歴史の移り変わりを見せました。ただし、幕末に差し掛かると再び衰退の道を辿り、明治時代にはその姿を消してしまったと言われています。

最近まで近隣では鉛や亜[[鉛]]が採掘されていたものの、カドミウム汚染問題や採算面から、全ての鉱山は閉山となり、その歴史は幕を閉じました。対馬銀山は、日本の鉱山史において重要な位置を占める存在であることは今も変わりません。

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