寿岳潤

寿岳 潤（じゅがく じゅん）

日本の天文学者。1927年9月19日、京都府に生まれ、2011年9月14日に逝去しました。東京大学名誉教授として、長年にわたり天文学の研究教育に貢献しました。特に、地球外知的生命体探査（SETI）という分野において、日本における先駆者としてその名を広く知られています。

人物と背景

寿岳潤氏は、文芸評論家で書誌学者の父・寿岳文章、翻訳家や評論家として活躍した母・寿岳しづ、そして国語学者や社会運動家であった姉・寿岳章子という、著名な文化人を輩出した一家に育ちました。幼少期に一家は京都府向日市へ移り住み、そこで少年時代を過ごしています。この文化的豊かな環境が、後の学問的探求心に影響を与えた可能性も考えられます。

学歴と研究活動

旧制京都府立一中、旧制三高を経て、1950年に京都大学理学部を卒業しました。その後、アメリカ合衆国へ渡り、ミシガン大学大学院天文研究科にて天文学を専攻し、1957年に博士課程を修了しています。1958年には、論文「蝎座タウ星大気におけるヘリウムと水素の組成比について」により理学博士の学位を取得しました。同年、カリフォルニア工科大学の研究員としても活躍し、国際的な視野を広げました。

1963年に帰国し、東京大学附属東京天文台に入台します。翌1964年には東京大学の助教授に就任し、教育・研究活動に従事しました。1986年には教授に昇進し、多くの後進の指導にあたります。1988年に東京大学を定年退官し、名誉教授の称号を得ました。退官後は、東海大学文明研究所の教授としても活動を続け、1993年に同大学を定年退任しています。

SETI研究の先駆者として

寿岳氏は、地球外知的生命体探査（SETI）の分野における日本の草分け的存在です。国際天文学連合（IAU）の第51分科会（生物天文学）の副委員長を務めるなど、国際的な場でもリーダーシップを発揮しました。1991年には、野口邦男氏と共に、部分的ダイソン球の探査を目的とした赤外線観測を行いました。これは、日本で行われた初めてのSETI観測として歴史に刻まれています。

また、寿岳氏は科学の健全な発展を支持する立場から、1991年に哲学者である高橋昌一郎氏や物理学者の大槻義彦氏らとともに、懐疑主義者団体「Japan Skeptics」の設立に参画しました。

著書

寿岳潤氏の著作には、専門分野に関するものから一般向けの啓蒙書まで幅広くあります。主なものには以下の書籍があります。

『星座をみる楽しみ』（小林悦子との共著、岩波書店、1984年）
『宇宙論はいま』（責任編集、丸善、パリティブックス、2003年）
* 『科学者たちのまじめな宇宙人探し』（石原藤夫、大島泰郎、滝沢守、平林久、松田卓也、森本雅樹、横尾広光との共著、立風書房、1990年）

2011年に83歳で永眠。墓所は京都市の南禅寺慈氏院にあります。その生涯は、天文学、特に宇宙における生命探求という未知の領域の開拓に捧げられました。

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