封常清

封常清（ほう じょうせい）

封常清は、唐代の武将であり、その生涯は波乱に満ちたものでした。生年は不詳ですが、天宝14載（756年）に処刑されたことが記録に残っています。彼は、西域で高仙芝に従い、多くの功績を挙げましたが、安史の乱において敗戦の責任を問われ、悲劇的な最期を遂げました。

生い立ちと高仙芝との出会い

封常清は、蒲州猗氏県（現在の山西省運城市臨猗県）の出身です。母方の祖父が流罪となったため、安西に移り住むことになりました。彼は、斜視で足が不自由であり、容姿に恵まれていませんでしたが、幼少の頃から学問に励み、特に読書を好んだと伝えられています。外祖父の死後は貧しい生活を送っていましたが、都知兵馬使であった高仙芝の才能に感銘を受け、その従者となることを志しました。

当初、封常清は容姿を理由に高仙芝から拒絶されましたが、諦めずに何度も懇願した結果、最終的に従者として認められることになりました。このエピソードは、彼の不屈の精神と高仙芝への強い尊敬の念を示しています。

軍人としての頭角

高仙芝の従者となった封常清は、その才能をいかんなく発揮しました。開元29年（741年）の達奚部落討伐では、詳細な戦勝報告を作成し、高仙芝を驚かせました。その報告書には、井戸や泉の位置、敵の動き、勝利に導いた計略など、戦況を正確に把握した情報が網羅されていました。この功績により、彼は判官の劉眺や独孤峻からその異才を認められ、次第に昇進を重ねていきました。

鎮将、果毅校尉、折衝校尉と順調に昇進し、天宝6載（747年）には、高仙芝が安西四鎮節度使に昇進した際、慶王府録事参軍・節度判官・朝散大夫に任じられました。安西四鎮の倉庫、屯田、武器、営田などを統括し、高仙芝が遠征に出る際には留守を任されるなど、その信頼は厚いものでした。封常清は、卓越した才覚と学識、そして決断力を兼ね備えており、その能力は高く評価されていました。

高仙芝の乳母の子である郎将の鄭徳詮が封常清に無礼を働いた際、鄭徳詮は高仙芝から兄弟のように扱われ、家のことを全て任されていましたが、封常清はこれを処刑しました。高仙芝の妻と乳母は鄭徳詮を救おうとしましたが、封常清は拒否しました。高仙芝はこの件について封常清に何も問うことはなく、封常清も謝罪しなかったと伝えられています。また、軍紀を乱した大将を二人撃殺したこともあり、軍人たちは彼を恐れるようになりました。

天宝10載（751年）に高仙芝が河西節度使に転任すると、封常清はその後任の判官に任命されました。王正見が安西四鎮節度使になった際には、安西四鎮支度営田副使・行軍司馬に任じられ、その地位を確固たるものとしました。

節度使としての活躍と安史の乱

天宝11載（752年）、王正見の死後、封常清は安西副都護・御史中丞・安西四鎮節度使に任命されました。翌年には、配下の段秀実の助けもあって大勃律国を降伏させ、その軍事的才能を改めて示しました。天宝13載（754年）には長安に入り、御史大夫に任命され、程千里の後任として、北庭都護・安西四鎮節度使に就任しました。彼は勤勉で質素な生活を送り、苦労を厭わず、賞罰を厳格に行ったため、人望を集めました。

天宝14載（755年）、安禄山の反乱が勃発すると、封常清は玄宗から対応策を問われました。彼は洛陽に赴き、早期に安禄山の首を討ち取ると明言しましたが、現実はそう簡単にはいきませんでした。洛陽で6万の兵を集めましたが、寄せ集めの兵士では精強な安禄山軍には歯が立ちませんでした。河陽橋を破壊し、洛陽の守りを固めようとしましたが、安禄山軍は黄河を渡り、各地を攻略しました。

封常清は武牢で安禄山軍の先鋒と交戦しましたが敗北し、洛陽の上東門まで退却しました。洛陽は陥落し、河南尹の達奚珣は降伏、多くの将兵が処刑されました。封常清は敗走の際、敵の追撃を遅らせるために樹木を倒すなどの抵抗を試みましたが、最終的には陝郡まで退却しました。そこで唐軍を率いてきた高仙芝と再会し、安禄山軍の勢いを伝え、潼関を守ることを進言しました。その後、長安へ向かいましたが、一兵卒に降格させられ、潼関に戻るように命じられました。

高仙芝と共に潼関を守備する中、監軍の辺令誠による讒言を受け、高仙芝と共に処刑されることになりました。彼は処刑される前に上奏文を辺令誠に託し、従容として処刑されたと伝えられています。多くの人々が彼の死を悲しんだとされています。

死後の評価

封常清は、その軍事的才能と誠実な人柄で多くの人々に尊敬されていました。しかし、安史の乱という時代の激流の中で、その才能を十分に発揮することができず、悲劇的な最期を迎えました。彼の死は、唐朝の衰退を象徴する出来事の一つとして、歴史に深く刻まれています。

伝記資料

『旧唐書』巻一百四 列伝第五十四「封常清伝」
『新唐書』巻百三十五 列伝第六十「封常清伝」

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