潼関について
潼関(どうかん、とうかん, Tong Pass)は、
中国陝西省の東端、現在の渭南市潼関県北部に位置する、黄河の屈曲点にある
関所です。古くから
中原と関中を結ぶ交通の要衝であり、軍事的な要地としても重要な役割を果たしてきました。
地理
黄河が南から流れ、
華山に突き当たって西から流れる渭水と合流し東へ向かう、その屈曲点の南岸に潼関は位置します。この地形の険しさから、
中原(
河南省、洛陽方面)と関中(
陝西省、
長安方面)を結ぶ上で、重要な拠点となっていました。
名称の変遷
「潼関」という名称は、曹魏時代から文献に登場します。北魏の酈道元が著した『水経注』には、黄河が山に「潼激」することから名付けられたと記されています。しかし、それ以前は「桃林塞」や「
函谷関」といった名称で呼ばれていました。特に、「
函谷関」という名称は、時代や政治状況によって、現在の潼関県から
河南省霊宝市までの広い地域を指す場合もありました。歴史地理学者の塩沢裕仁は、この地域における関塞の変遷を考慮し、潼関を「第四の
函谷関」と位置づけています。
歴史
春秋時代には、晋によってこの地に桃林塞が築かれました。これは、東の
函谷関と共に、関中を守る重要な役割を果たしたとされています。
後漢時代には、
函谷関が洛陽付近に移されたため、新たに潼関が設けられました。
三国時代には、
曹操軍と
馬超・
韓遂らの関中軍閥の間で潼関の戦いが行われました。この戦いの記述は、「潼関」という名前が登場する初出の記録です。
唐の時代には、
安史の乱の初期に潼関が戦場となり、
唐軍が敗北し、
長安から蜀へと逃れる事態となりました。20世紀まで、黄河の畔にあった潼関の町は、対岸の風陵渡と共に商業地として栄え、鉄道も敷設されていましたが、1950年代の三門峡ダム建設により、町は南に移転し、鉄道も付け替えられました。
遺跡
現在、「潼関」として認識されているのは、三門峡ダム建設時に放棄された明清代の潼関県の県城跡です。この遺跡は、比較的良好な状態で残っており、当時の様子を偲ぶことができます。また、
周辺の台地上には、古代の関塞や古道に関連する遺跡も点在しており、歴史を考える上で重要な手がかりとなっています。
南巡城址は明清代の遺構とされますが、
殷周代の遺構の上に築かれた可能性も指摘されています。
周辺では、戦国時代の遺跡も確認されており、桃林塞との関連性が考えられています。また、禁溝河の西側にある十二連城は、烽火台の跡であり、築造時期は戦国時代に遡るという説もあります。
文学における潼関
『
書経』には、
周の武王が
殷の紂王を討伐した後、軍用の牛馬を放った場所が桃林であると記されています。また、
杜甫の詩「潼関吏」では、異民族に備えた潼関の堅牢な工事と、
哥舒翰率いる軍の敗北が描かれています。
このように、潼関は歴史的に重要な場所であり、多くの文化や文学作品にも影響を与えてきました。