専門図書館

専門図書館（せんもんとしょかん）

専門図書館（英：Special library）とは、図書館をその設立主体や目的に応じて分類する際に用いられる区分の一つです。一般的に知られる公共図書館、大学図書館、学校図書館、国立図書館といった種別には含まれない特性を持っています。

特徴と定義

専門図書館は、主に特定の機関や団体によって設置・運営されています。例えば、国の機関や議会、各種の研究所や美術館、博物館、さらには民間企業や各種団体などがこれにあたります。これらの機関の活動や目的に沿った、専門的な情報ニーズに応えることを主眼としています。

また、専門図書館の「専門」という語は、必ずしも設立主体だけでなく、収集・管理する資料の分野、提供するサービスの目的、あるいは特定の利用者層など、多様な観点から捉えることができます。例えば、公文書、特定の産業に関する資料、芸術分野の資料、あるいは特定の障害を持つ利用者向けの資料といったように、限定された主題や対象に特化している場合も専門図書館と呼ばれます。この定義に基づけば、国立図書館や大学図書館であっても、ある特定のコレクションやサービスに特化している場合には、専門図書館としての性格を併せ持つとみなされることもあります。

専門図書館は、その性格上、一般的な図書館とは異なり、「資料センター」や「資料室」といった名称で呼ばれることも少なくありません。これは、単に資料を収蔵するだけでなく、利用者の専門的な調査研究を支援するための高度な情報サービスを提供することに重点を置いているためです。

日本の専門図書館

日本国内には数多くの専門図書館が存在し、それぞれの専門分野において重要な情報拠点としての役割を果たしています。これらの専門図書館間の連携や情報交換を促進するために設立された団体として、「専門図書館協議会」があります。1952年に発足したこの協議会には、2014年の時点で約460もの機関が加盟しています。

専門図書館協議会は、国内の専門情報機関に関する網羅的な情報をまとめた『専門情報機関総覧』を3年ごとに刊行しています。近年の刊行状況を見ると、2009年版では1761機関、2012年版では約1700機関、2015年版では1660機関がこの総覧に掲載されており、日本における専門図書館の多様性と数を示しています。

日本国内の専門図書館の具体例としては、学術研究機関の図書館（例：アジア経済研究所図書館、国文学研究資料館）、官公庁や公的機関の資料室（例：国立公文書館、内閣文庫）、企業や団体のライブラリー（例：経団連レファレンスライブラリー、社史研究センター）、特定の主題に特化したコレクションを持つ施設（例：大宅壮一文庫、国際児童文学館、京都国際マンガミュージアム、鉄道博物館図書室）、地方公共団体の専門資料施設（例：神奈川県立川崎図書館）、さらにはアーカイブ施設や美術館・博物館の図書室などが挙げられます。

米国の専門図書館

国際的な専門図書館の連携組織としては、米国に本部を置く「専門図書館協会（Special Library Association: SLA）」が著名です。1909年に設立されたSLAは非営利の国際組織であり、北米を中心に活動を展開しています。組織構造は、地域ごとの支部（Chapter）、専門分野ごとの分科会（Division）、そして特定のテーマに基づくローカルミーティング（Caucus）によって構成されています。

SLAの会員は、企業、教育機関、政府機関、非営利団体など、様々な分野の情報部門で活躍する専門家たちです。米国国内にとどまらず、世界80カ国以上に約12,000人の会員を擁しており、専門図書館や情報サービスに関わる専門家たちの継続的な学習機会を提供し、業務遂行を支援するとともに、国際的なネットワークの構築と強化に貢献しています。

専門図書館は、その高度な専門性と個別最適化されたサービスにより、現代社会における多様な情報ニーズに応える上で不可欠な存在となっています。

関連項目

専門図書館協議会
専門情報機関総覧
アーカイブ
アーキビスト
司書
図書館情報学

外部リンク

* 専門図書館協議会

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