将軍継嗣問題

将軍継嗣問題の詳細

将軍継嗣問題とは、江戸幕府の第13代将軍である徳川家定の後継者を巡る政治的な対立を指します。これは江戸幕府の12代将軍である徳川家慶が病気により後継者を育てることが困難になったことから始まりました。家慶には嫡男がありましたが、彼は病弱であり、将来的に政務を担うことが難しいとされていました。

そのため、家慶は水戸藩主である徳川斉昭の子、すなわち一橋家の徳川慶喜を養子に迎えることを考えました。しかし、この案は老中の阿部正弘の強い反対によって実現せず、家定に何かがあった際の後継者候補として慶喜を留めることになりました。このようにして、家定が将軍に就任することになりました。

しかし、家定は将軍になってからさらに病状が悪化し、時には廃人に近い状態にまで陥りました。そのため、将軍職を全うすることができず、後継者問題が急浮上しました。この状況を憂慮した日本の有力大名たちは、対応能力のある将軍を立てる必要があると認識し、斉昭の実子である慶喜を擁立しようとしました。

比較的保守的な譜代大名や徳川家内部の大奥は、家定の血筋に近い紀州藩主の徳川慶福（後の徳川家茂）を擁立しようとする動きを見せました。この対立は一橋派と南紀派という二大派閥の形成につながりました。

この時期、安政の改革を推進していた阿部正弘が急死すると、譜代大名たちの反撃が始まり、特に大奥も「大奥の粛正」として斉昭の考えに反発しました。このような状況下で、開国派と攘夷派の対立がさらに複雑な情勢を生むこととなりました。

1858年、家定が重態に陥ると、南紀派の譜代大名は彦根藩主の井伊直弼を大老に据え、家定の名のもとで後継者として慶福を指名することを発表しました。この決定については、南紀派による計画だと見られていますが、家定自身の意思が完全に失われているわけではなく、慶喜に対する個人的な反感から慶福を選んだ可能性もあります。

実際、家定は慶喜の容姿に嫉妬心を抱いていたという意外な要因も影響していたと言われています。このような経過を経て、家定の没後、慶福は家茂と改名され将軍に就任しました。

同年6月には、一橋派が朝廷に対して有力な将軍候補を提言するよう求める働きかけが行われましたが、江戸城内ではこの勅書が隠され続けました。このため、家茂の後継者としての地位は朝廷の意向とは無関係に確立されたとされています。

井伊直弼は家茂を将軍に据えた後、一橋派などの反対派に対する弾圧を開始しましたが、その後、井伊は桜田門外の変で命を奪われ、結果的に一橋派は復活しました。一橋派の慶喜は家茂の死後、第15代将軍として就任する運命を辿ることになります。

将軍継嗣問題は単なる後継者争いではなく、江戸時代の日本における大名たち、特に徳川家及び幕府内部の権力バランスを反映した複雑で興味深い政治劇といえるでしょう。

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