一橋派

一橋派の概要と歴史的背景

一橋派（ひとつばしは）は、幕末期の政治的派閥の一つであり、主に13代将軍徳川家定の後継者問題に関連して活動していました。この派閥は、徳川慶喜を推挙する立場を取っており、慶喜は後に15代将軍として知られる人物です。

徳川家定の継嗣問題

徳川家定は病弱で長命や子息の誕生が期待できない状況でした。このため、後継者問題が浮上し、政治情勢が緊迫しました。家定の後を継ぐべき人物として、一橋徳川家の当主である徳川慶喜が支持されました。彼は年長で賢明とされ、一橋派の中心的存在となりました。

一橋派のメンバーと支援者

一橋派は、慶喜の実父である前水戸藩主・徳川斉昭や、さまざまな親藩大名からの支持を受けました。具体的には、実兄の水戸藩主・徳川慶篤や、越前藩主・松平慶永、尾張藩主・徳川慶勝などが一橋派の支持者です。また、薩摩藩主・島津斉彬や宇和島藩主・伊達宗城、土佐藩主・山内豊信などの外様大名も、この派閥に加担しました。

一橋派は南紀派と対立しました。南紀派は、紀州徳川家の徳川慶福（後の14代将軍徳川家茂）を後継者として推挙し、伝統的に幕政を主導していた譜代大名が中心となっていました。一方、一橋派は幕政から遠ざけられていた親藩や外様大名が主体となっており、これは老中首座・阿部正弘が彼らを幕政に参画させた結果、発言力を高めたこととも関係しています。

幕政における一橋派の動き

一橋派は、安政3年（1856年）には島津斉彬が家定の後室に養女を望むなど、大奥への工作も試みました。しかし、徳川斉昭はその厳格な性格と惹かれやすい大奥の雰囲気から、彼らの勢力を浸透させることはできませんでした。

その後、阿部正弘の死去により、幕閣内の権力構造が変化しました。老中・堀田正睦が一橋派に好意を示し、日米修好通商条約を巡る争いから京都の朝廷を巻き込んで意思決定が行われるようになりました。両派の対立は一層激化し、松平慶永の腹心・橋本左内や島津斉彬の側近・西郷隆盛が京都で暗躍しました。

しかし、南紀派の重鎮・井伊直弼が大老に任じられ、彼の主導の下で条約問題や継嗣問題が一挙に解決される見込みが立ちました。その結果、慶福が後継者に選ばれ、一橋派は敗北を余儀なくされました。

一橋派の衰退とその後

この結果に対して不満を募らせた斉昭や慶篤、慶勝、慶永らは、江戸城への無断登城を試み、井伊に抗議しました。この行動が引き金となり、井伊は「安政の大獄」を開始し、南紀派は対立派閥を弾圧しました。一橋派の大名たちは隠居や謹慎に追い込まれ、厳しい状況に置かれました。島津斉彬も出兵前に病没し、彼の復権は生涯をかけて実現されることはありませんでした。

一橋派の大名たちの復権は、桜田門外の変を経て井伊が暗殺された後、斉彬の弟である島津久光の率いる運動によって成し遂げられました。このように、一橋派は幕末における権力争いの中で重要な役割を果たし、その動向は幕政や歴史に影響を与えました。

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