小キュロス

小キュロス：アケメネス朝の王子とクナクサの悲劇

キュロス（紀元前？-紀元前401年）は、アケメネス朝ペルシアにおいて、その名を知らしめた王子です。アケメネス朝を築いたキュロス2世と区別するため、小キュロスと呼ばれています。彼は大王ダレイオス2世の次男として生まれ、母パリュサティスは皇后でした。

若くしてサルディス総督に任命され、アナトリア地方の統治を担いました。その頃、ギリシャ世界ではペロポネソス戦争が終末期を迎えており、キュロスはスパルタを支援し、アテナイを敗北に追い込むなど、積極的な外交を展開しました。

父ダレイオス2世の死後、母パリュサティスはキュロスの即位を強く望みました。しかし、ダレイオス2世は長男のアルタクセルクセス2世を後継者に指名していたため、キュロスは兄への反乱を決意します。

当初、キュロスはアルタクセルクセス2世の暗殺を企てたとも伝えられていますが、計画は失敗に終わり、その後、母の尽力でサルディス総督の地位を保ちました。しかし、兄への反逆心は消えず、キュロスは秘密裏に反乱の準備を始めます。

彼は1万人のギリシャ人傭兵を雇い入れ、スパルタからも重装歩兵や軍船の支援を受けました。大軍を率いて東方へと進軍を開始したキュロスは、兄アルタクセルクセス2世率いるペルシア軍とバビロニアのクナクサで激突します。

クナクサの戦いは、ギリシャ傭兵の奮戦により、当初はキュロス軍が優勢に戦いを進めました。しかし、キュロス自身がアルタクセルクセス2世を討ち取ろうと突出した際に、敵の槍に当たり、戦死しました。

この戦いの模様、そして敵地に取り残されたギリシャ傭兵たちの苦難の撤退は、クセノポンによって『アナバシス』として記録されています。『アナバシス』の中で、クセノポンはキュロスの優れた能力と人格を称賛しており、キュロスの人物像を知る上で重要な史料となっています。

キュロスの生涯は、権力闘争と野望、そして悲劇的な最期によって彩られています。彼は優れた統治者であり、戦略家であった一方、兄への反乱という道を歩み、命を落としました。彼の物語は、古代ペルシアの歴史における重要な一章であり、現代においても多くの研究者や歴史愛好家の関心を集めています。

参考文献

Pierre Briant: From Cyrus to Alexander: A History of the Persian Empire. Winona Lake 2002.
Josef Wiesehöfer: Das antike Persien 550 v. Chr bis 650 n. Chr. Patmos, Düsseldorf 2005, ISBN 3-4919-6151-3.

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