小侍従局

小侍従局（こじじゅう の つぼね）

小侍従局は、戦国時代の動乱期を生きた女性で、室町幕府13代将軍・足利義輝の側室として知られています。彼女の生涯は、当時の政治情勢に翻弄されながらも、将軍の寵愛を受け、その血筋を繋ぐという重要な役割を果たしました。以下に、彼女の生涯、人物像、そして悲劇的な最期について詳述します。

生涯

小侍従局は、室町幕府の有力な奉公衆であった進士晴舎の娘として生まれました。詳細な生年は不明ですが、当時の社会情勢を考えると、公家出身の女性として、高い教養と品格を備えていたと考えられます。彼女は足利義輝に見初められ、その側室となりました。義輝は彼女を深く愛し、二人の間には少なくとも二人の娘が生まれています。山科言継の日記『言継卿記』には、義輝の次女（1564年2月24日生）と三女（1565年4月17日生）の生母が小侍従局であると記されています。また、義輝の嫡子とされる輝若丸の生母も彼女ではないかという説がありますが、詳細は明らかになっていません。

1565年5月19日、永禄の変と呼ばれるクーデターが勃発し、足利義輝は三好義継や三好三人衆によって殺害されました。この変の際、三好側が二条御所を襲撃する際に突きつけた要求の一つに、義輝から寵愛を受けていた小侍従局の命を絶つことが含まれていました。彼女は襲撃の混乱に乗じて御所を脱出し、近衛家の一族である久我家に匿われましたが、わずか数日後、隠れ家である京都市伏見区竹村にて、義輝側の財物を押収しに来た松山重治によって見つけられ、知恩院にて殺害されました。彼女の死は、戦国時代の無常さを象徴する出来事として、後世に語り継がれています。

人物像

小侍従局は、ルイス・フロイスの『日本史』において、「公方様の夫人は、実は正妻ではなかった。だが彼女は懐胎していたし、すでに公方様は彼女から二人の娘をもうけていた。また彼女は上品であったのみならず、彼から大いに愛されてもいた」と記述されています。さらに、フロイスは世間の人々が義輝は他の女性を妻とすることなく、小侍従局に王妃の称号を与えるだろうと見ていたと述べています。これは、彼女が単なる側室ではなく、事実上の正室として扱われていたことを示唆しています。

フロイスの記録には、永禄の変当時、小侍従局が妊娠していたという記述もあります。しかし、彼女が変の1ヶ月前に三女を出産しているため、この記述は正確ではないと考えられます。フロイスは、三好勢が小侍従局を執拗に捜索し、発見した者には報酬を、隠匿した者には厳罰を科すと布告したとも記しています。これは、三好方が彼女が産むであろう男児を警戒していたためだと考えられています。

また、『足利季世記』には、「公方ノ御寵愛アリシ小侍従ト申女性ヲバ害シ奉ル」という記述があり、小侍従局が義輝から特別な寵愛を受けていたことが窺えます。これらの記録から、小侍従局は美貌と品格を兼ね備えた女性であり、義輝にとってかけがえのない存在であったと考えられます。彼女の悲劇的な死は、義輝の側近や支持者たちに深い悲しみと衝撃を与えたに違いありません。

まとめ

小侍従局は、戦国時代の動乱の中で、その美貌と教養、そして将軍からの寵愛を一身に受けた女性でした。しかし、その幸せは長くは続かず、永禄の変という歴史的な事件に巻き込まれ、悲劇的な最期を遂げました。彼女の生涯は、戦国時代の女性たちの置かれた過酷な状況を象徴するとともに、歴史の激動の中で翻弄された人々の悲哀を今に伝えています。

彼女の存在は、単なる歴史上の人物としてではなく、当時の社会、文化、そして人間関係を理解する上で、重要な視点を提供してくれます。その名は、戦国時代の悲劇を語る上で、決して忘れてはならないでしょう。

もう一度検索