小口忠

小口忠: 日本映画界の草創期を支えた映画監督

小口忠（おぐち ただし、1878年12月1日 - 1942年5月24日）は、日本の映画史において欠かせない存在である。彼は監督や脚本家として活動し、特に日本のサイレント映画の発展に大きく寄与したことで知られています。実業家としても成功を収めた小口の人生について詳しく見ていきましょう。

生い立ちとキャリアの始まり

小口忠は1878年に東京で生まれましたが、正確な生地は不明です。映画の初期には、本郷座の座付作家・佐藤紅緑の弟子として、脚本家としてのキャリアをスタートさせました。1908年には吉沢商店に所属し、短編のサイレント映画の脚本を手がけましたが、具体的な作品名は定かではありません。

結婚相手の寺本みち子（後の小口みち子）との出会いを経て、2人は1910年に結婚し、子どもも授かりました。しかし、悲しいことに、長女が麻疹で亡くなるという苦難も経験しました。

日活向島撮影所と日本映画の発展

1912年に「日本活動写真株式会社」（通称日活）が設立され、同社は多くのサイレント映画を製作しました。小口はこの撮影所に所属し、『狂言方』という脚本家兼監督としての役割を担い、700本を超える作品の多くを手がけました。彼のスタイルや声のかけ方は独特で、撮影中のかけ声は「行くよ」や「終わり」、フィルムのロールチェンジ時には「待った」といったものでした。

小口は洋装を着ることはなく、常に和服姿で撮影に臨んでいました。彼の教えを受けた弟子たちには、後に監督として名を上げた田中栄三や溝口健二がいます。彼らの作品において小口の影響が色濃く残っています。

1921年から新劇への移行が進む中、小口は1922年の『寒山寺の一夜』をもって日活を退社します。退社後は妻の行っていた化粧品事業に専念し、実業家としての新しい道を歩みました。

晩年と死

1923年の関東大震災では、多くの人的・物質的損失があった中、小口の手がけた日活向島撮影所も壊滅的な被害を受けました。彼自身も病気に苦しみ、晩年に手足を切断するなどの厳しい状況に見舞われましたが、その中でも映画への情熱は途切れませんでした。1942年には肺炎により63歳の若さでこの世を去り、多磨霊園に葬られました。

妻のみち子も戦後まで生きるものの、彼女の事業は縮小されていきました。小口忠の業績は、映画界において数多くの人々に影響を与え、後世にもその名が語り継がれています。彼の人生は映画という文化を育てた日本における重要な一部分であり、今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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