小夜の中山

小夜の中山（さよのなかやま）は、静岡県掛川市佐夜鹿に位置する標高252mの峠です。古くは遠江国に属し、東海道の宿場町、金谷宿と日坂宿の間に位置していました。この峠は、箱根峠、鈴鹿峠と並び、東海道の三大難所として知られていました。

峠の頂上には、真言宗の久延寺があり、西側の麓には日坂宿の入口に事任八幡宮があります。これらの場所は、旅の安全を願う人々が多く立ち寄ったと伝えられています。

小夜の中山は、遠州七不思議の一つである「夜泣き石」の伝説でも知られています。夜泣き石は、赤ん坊の泣き声をあげると言われており、その不思議な現象が人々の興味を引いてきました。

歴史

小夜の中山は、古くから交通の要所として重要な役割を果たしてきました。歌枕としても知られ、『古今集』など多くの歌に詠まれてきました。特に有名なのは、鎌倉時代初期の西行法師が詠んだ「年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜の中山」の歌です。この歌は『新古今和歌集』に収録され、歌碑が建てられています。また、松尾芭蕉もこの歌に触発され、「命なりわづかの笠の下涼み」という句を詠んでいます。芭蕉の句碑も小夜の中山に存在します。

建武2年（1335年）には、中先代の乱の舞台となり、北条時行と足利尊氏の軍勢が激突しました。この小夜中山合戦では、今川頼国が名越高邦を討ち取ったとされています。今も、頼国によって討たれた高邦の墓とされる鎧塚が残っています。戦国時代にも、小夜の中山はしばしば戦場となりました。

明治時代に入ると、1880年（明治13年）に、小夜の中山を越える従来のルートに代わり、北側の沢沿いを切り開いて中山新道が建設されました。この新道は、現在の国道1号および静岡県道381号島田岡部線の旧金谷宿までの区間にあたり、当初は有料道路でしたが、東海道本線の開通により利用者が減少し、1902年（明治35年）に静岡県に買い取られ無料化されました。その後、1905年（明治38年）に国道となり、1932年（昭和7年）には小夜の中山トンネルが建設され、交通の便が大きく向上しました。

小夜の中山は、その歴史的な背景や伝説、文学的な価値から、現在も多くの人々が訪れる場所となっています。

関連項目

菊川宿
日坂バイパス
島田金谷バイパス
日本の峠一覧
* 歌い骸骨: 小夜の中山を舞台とする説話があります。

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