小姓を伴うアルフォンソ・ダヴァロスの肖像

作品について

『小姓を伴うアルフォンソ・ダヴァロスの肖像』は、イタリア盛期ルネサンスの巨匠、ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1533年に制作した肖像画です。この作品は、神聖ローマ皇帝カール5世に仕えた将軍、アルフォンソ・ダヴァロスの姿を描いています。

この肖像画は、1533年の冬にボローニャで描かれました。ダヴァロスは、小姓を見下ろすように描かれており、鎧を身に着けています。この姿は、神聖ローマ皇帝カール5世の下で、ミラノ総督、イタリアにおける皇帝軍総指揮官として絶大な権力を振るった彼の立場を象徴しています。ダヴァロスは、自身の容貌に非常に気を遣っていたことでも知られています。

スペイン系ナポリ貴族の家に生まれたダヴァロスは、従兄弟のフェルディナンド・フランチェスコの下で軍人としての訓練を受けました。数々の戦勝を収めた後、金羊毛騎士団に入会を認められました。この作品では、ダヴァロスは、皇帝軍の指揮官としてふさわしい、精緻で美しい鎧の上に騎士団のカラーを身につけています。画面の左下には、小姓が彼に兜を渡そうとしている様子が描かれています。ティツィアーノは、ダヴァロスに教養のある思慮深い人物としての真摯さを与えつつ、彼の権威を表現することに成功しています。

なお、ティツィアーノは後年、1540年から1541年にかけて、『軍隊に演説するアルフォンソ・ダヴァロス』も描いています。この作品は、現在プラド美術館に所蔵されています。

歴史

この肖像画は、モデルとなったアルフォンソ・ダヴァロスの息子、フランチェスコ・フェルディナンド・ダヴァロス（1530年頃-1571年）に相続されました。その後、しばらくの間はダヴァロス家が所有していたと考えられています。作品は、不明な時期にポーランドに移り、ポーランド王ヤン3世とスタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキの手に渡りました。その後、おそらくポトツキ家に寄贈され、1921年までポトツキ家が所有していました。

1921年、アルフレッド・ポトツキは、マルティーヌ＝マリー＝ポル・ド・ベアグ伯爵夫人（1870年-1939年）にこの作品を売却しました。彼女は、この作品と自身のコレクションを甥のユベール・ド・ガナイに遺しました。1989年、ド・ガナイの遺産相続人たちは、コレクションの大部分をモンテカルロのサザビーズで競売にかけました。翌年、保険会社のアクサがこのティツィアーノの作品を6500万フランで購入しました。アクサは、ルーヴル美術館に20年間作品を貸し出し、美術館がインフレを加算した6500万フランで買い取る権利を与えました。ルーヴル美術館館長のピエール・ロザンベールによって買取交渉が成立しましたが、次の館長のアンリ・ロワレットが期限である12年を過ぎてしまったため、2003年にゲティ美術館が作品を7000万ドルで購入することが可能となりました。作品が個人の所有物であり、フランス国立美術館連合が購入に反対する決定を下したため、フランス政府は国外売却を拒否することができませんでした。

現在、この作品はロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館に所蔵されており、同美術館の貴重なコレクションの一つとなっています。

J・ポール・ゲティ美術館公式サイト、ティツィアーノ『小姓を伴うアルフォンソ・ダヴァロス』 (英語)

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