小学校令

小学校令とは

小学校令とは、近代日本の初等教育制度を確立するために制定された一連の勅令です。主に明治時代に公布され、日本の教育制度の基礎を築きました。この勅令は、時代とともに改正を重ね、最終的には国民学校令へと発展しました。ここでは、小学校令の歴史的背景、各小学校令の内容、そしてその変遷について詳しく解説します。

小学校令の歴史

小学校令は、大きく分けて3つの時期に制定されました。

1. 第一次小学校令（明治19年）： 1886年（明治19年）4月10日に公布された最初の小学校令です。当時の文部大臣、森有礼のもとで制定され、それまでの教育令を廃止しました。
2. 第二次小学校令（明治23年）： 1890年（明治23年）10月7日に公布され、第一次小学校令を廃止しました。地方自治制度の確立に伴い、小学校制度をより詳細に規定しました。
3. 第三次小学校令（明治33年）： 1900年（明治33年）8月20日に公布され、第二次小学校令を全部改正しました。義務教育の年限を統一し、無償化の原則を明示しました。

これらの小学校令は、1941年（昭和16年）に国民学校令が施行されるまで、日本の初等教育制度を支え続けました。形式的には、学校教育法の施行により国民学校令が廃止される1947年（昭和22年）まで存在していました。

第一次小学校令（明治19年）

1886年（明治19年）4月10日に公布された第一次小学校令は、全16条から構成され、小学校の設置と運営に関する基本事項を定めました。また、同年5月25日には「小学校ノ学科及其程度」を公布し、教育内容の基準を示しました。

内容

小学校の段階: 尋常小学校（修業年限4年）と高等小学校（修業年限4年）の2段階制を導入。
就学義務: 学齢は6歳から14歳までの8年間で、尋常小学校の修了までの4年間を義務教育期間としました。
就学猶予: 疾病や家計困窮などの理由で就学が困難な場合、知事が就学猶予を許可できるとしました。
学級規模: 尋常小学校は1クラス80人以下、高等小学校は1クラス60人以下と規定。
経費: 主に授業料と寄付金で賄い、不足する場合は区町村費で補填。
小学簡易科: 地方財政を考慮し、簡易な初等教育を施す制度として、尋常小学校の代用となる小学簡易科を設置。

第一次小学校令は、日本の近代初等教育の基礎を築きましたが、その後の社会変化に対応するため、改正が必要となりました。

第二次小学校令（明治23年）

1890年（明治23年）10月7日に公布された第二次小学校令は、第一次小学校令を全面的に改正し、小学校の制度をより詳細に規定しました。全96条からなり、地方自治制度の確立に伴う変更を反映しています。

変更点

小学校の目的: 「小学校は児童身体の発達に留意して道徳教育および国民教育の基礎ならびにその生活に必須なる普通の知識・技能を授くることを以て本旨とする」と明記。
小学簡易科の廃止: 尋常小学校の代用であった小学簡易科を廃止。
義務教育年限: 尋常小学校の修業年限を3年または4年とし、高等小学校の修業年限を2年、3年または4年としました。
専修科・補習科: 専修科や補習科を付設することが可能となり、徒弟学校や実業補習学校も小学校の種類とされました。
小学校の設置義務: 各市町村は学齢児童を就学させられる尋常小学校を設置する義務を負うことになりました。
学校組合: 町村単独での設置が困難な場合、郡長が学校組合の設立を認めることができるとしました。
私立小学校: 市町村の私立小学校は公立小学校の代用とすることができました。

関連法規

第二次小学校令の施行に伴い、多くの細則が制定されました。主なものとして、「私立小学校代用規則」、「小学校設備準則」、「小学校祝日大祭日儀式規程」、「小学校教則大綱」などが挙げられます。

一部改正

1899年（明治32年）には、実業学校令の施行に伴い、「徒弟学校と実業補習学校が小学校の種類である」という規定が失効しました。

第三次小学校令（明治33年）

1900年（明治33年）8月20日に公布された第三次小学校令は、第二次小学校令を全面的に改正し、日本の初等教育制度をさらに発展させました。全73条からなり、義務教育の普及と無償化を推進しました。

背景

明治30年代初頭、日本の近代化が進む中で、教育制度のさらなる整備が必要となりました。産業の発展や社会の変化に対応するため、小学校令も改正されました。

変更点

義務教育年限の統一: 義務教育である尋常小学校の修業年限を4年に統一し、従来の3年制を廃止しました。
高等小学校の併設: 将来の義務教育年限延長に備え、2年制の高等小学校を尋常小学校に併設することを奨励しました。
義務就学の厳格化: 就学を妨げる雇用を禁じ、病弱児に対する対策を講じるなど、就学義務を厳格化しました。
* 授業料の無償化: 公立の尋常小学校では、特別の場合を除き授業料を徴収してはならないと規定し、義務教育無償の原則を明示しました。

明治40年改正

1907年（明治40年）には、義務教育期間を6年間とする改正が行われました。これにより、尋常小学校の修業年限が2年延長され、6年制の小学校が確立しました。この改正は、当時の教育普及状況と国民の智徳向上への要請に応えるものでした。

国民学校令

1941年（昭和16年）、第三次小学校令は国民学校令へと改正され、小学校の名称も国民学校へと変わりました。これにより、日本の初等教育制度は新たな段階に入ることとなりました。

まとめ

小学校令は、明治時代から昭和初期にかけて、日本の初等教育制度の根幹をなした重要な勅令です。時代とともに改正を重ね、義務教育の普及と教育内容の充実を図りました。この変遷は、日本の近代化とともに、教育が社会に果たす役割が大きくなっていったことを示しています。

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