小宅近昭

小宅 近昭

小宅 近昭（おやけ ちかあき）は、日本の政治家です。1943年（昭和18年）1月17日に茨城県に生まれ、2019年（令和元年）8月4日に76歳でその生涯を閉じました。長きにわたり茨城県那珂地域の地方自治に深く関与し、特に那珂町長を3期務めた後、合併により誕生した那珂市の初代市長に就任。那珂市長としては4期を務めたとされており、通算して約16年以上にわたり地域の発展に貢献した人物として知られています。

経歴

茨城キリスト教短期大学を卒業後、小宅氏は茨城県庁に奉職し、地方行政の実務経験を積み重ねました。その後、那珂町に戻り、那珂町議会議員として活動を開始。議会を通じて住民の声に耳を傾け、それを町政に反映させるべく尽力しました。地方政治の現場で着実に経験と実績を積んだことが、後の首長としてのキャリアに繋がります。

1995年、小宅氏は那珂町長選挙に立候補し、激戦を制して初当選を果たしました。以来、2005年に那珂市が誕生するまでの約10年間、那珂町の最高責任者として町政の舵取りを担いました。この時期は、全国的に少子高齢化が進み、地方財政も厳しさを増していく中で、町民の福祉向上、地域経済の活性化、住みよい環境整備など、様々な課題に直面しながらも、持続可能な町づくりを目指した政策を推進しました。

市制施行と初代市長としての役割

2000年代に入ると、国主導の市町村合併が全国各地で積極的に推進されました。那珂町においても、行財政基盤の強化や住民サービスの効率化・均質化、広域的な行政需要への対応といった目的のため、周辺自治体との合併が重要な政治課題として浮上しました。小宅町長は、隣接する瓜連町との合併協議を積極的に推進する立場を取り、住民説明会や議会での丁寧な議論を通じて合意形成を図りながら、新しい市づくりに向けた準備を着実に進めました。

そして、2005年1月21日、那珂町と瓜連町は合併し、新たに「那珂市」が誕生しました。この歴史的な自治体再編の局面において、小宅氏は新設された那珂市の初代市長選挙に出馬。那珂町長として培った実績と、新市への移行期におけるリーダーシップに対する期待を背景に、初代市長として選出されました。

初代市長としての職務は、旧二町の行政組織や財政、そして住民意識を円滑に統合し、新たな那珂市としての一体感を迅速に確立することであり、極めて困難かつ重要な使命を伴うものでした。小宅市長は、旧町の文化や歴史を尊重しつつ、合併に伴う行政サービスの再編やインフラの調整、財政の均衡化といった多岐にわたる課題に果敢に取り組み、那珂市の揺るぎない基盤作りに尽力しました。住民サービスの維持・向上や、新市における都市計画の策定など、将来を見据えた市政運営を推進しました。

市政の継続、退任、そして栄誉

初代市長として示した手腕は高く評価され、2007年の市長選挙において再び市民の信任を得て再選を果たし、2期目の市政を担うこととなりました。引き続き、市民が安全で安心して暮らせるまちづくりや、地域経済のさらなる活性化に向けた施策を積極的に推進しました。しかし、2期目の任期終盤にあたる2011年の市長選挙では、対立候補として出馬した元那珂市議の海野徹氏に惜しくも敗れ、約16年間にわたる那珂地域の首長としての役割に区切りをつけることとなりました。那珂町長として3期、那珂市長として初代就任から通算して4期を務めたとされており、その長きにわたり那珂地域の発展に献身的に貢献しました。

市長退任後も、地方自治に捧げた長年の功績に対する評価は揺るぎませんでした。2014年秋の叙勲において、地方自治功労により旭日小綬章を受章しました。これは、長年にわたり地域社会の発展に尽くした者に対し国から授与される栄典であり、小宅氏の功績が国家によって正式に認められた証です。晩年は公職からは退いていましたが、郷土那珂市のさらなる発展を静かに見守っていました。

死去

2019年8月4日、76歳で死去しました。その死に際し、国家は彼が生涯をかけて地方自治に尽くした功績を改めて称え、死没日をもって従五位に叙しました。

小宅近昭氏は、那珂町の町政から、市町村合併を経て誕生した那珂市の市政へと、時代の大きな変化の中でリーダーシップを発揮し、今日の那珂市の礎を築いた人物として、その功績は郷土史に深く刻まれています。

参考文献

『地方選挙総覧 <知事・市長・特別区長> 平成篇 1989-2019』日外アソシエーツ、2019年
『茨城県人物・人材情報リスト 2021』日外アソシエーツ、2020年
* 『全国歴代知事・市長総覧』日外アソシエーツ、2022年

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