小宮路敏

小宮路 敏（こみやじ さとし、1936年〈昭和11年〉1月8日 - 2018年〈平成30年〉11月14日）は、日本の教育者であり作曲家として、昭和から平成にかけて多岐にわたる活動を展開しました。その名は「さとし」と読みますが、親しみを込めて「びん」と音読みで呼ばれることも多くありました。玉川学園では小学部の教諭や大学の通信教育課程における音楽分野の講師を務め、また文部科学省が認定する小学校音楽教科書の編集委員も歴任するなど、日本の音楽教育の発展に大きく貢献しました。

生涯と経歴

現在の中国東北部にあたる関東州大連市で生を受けた小宮路敏氏は、戦後の引き揚げを経て鹿児島県に移り住みました。鹿児島での学生時代は、現在の鹿児島大学教育学部附属中学校から鹿児島県立鶴丸高等学校へと進み、鹿児島大学教育学部では音楽科で専門的な学びを深めました。大学卒業後は、現在の鹿児島県指宿市にあたる開聞町の中学校で音楽教師として四年間の教職経験を積みました。その後、玉川学園の創設者である小原國芳氏との出会いが転機となり、1962年（昭和37年）に東京都町田市にある玉川学園へ活躍の場を移します。玉川学園では、小学部で実に32年間、そして大学で7年間にわたり教壇に立ちました。

教育者としての小宮路氏は、児童一人ひとりの個性や成長を深く見つめました。特に玉川学園の小学部では、五年、六年次の全クラスの児童一人ひとりに、写真や手書きの記録を添えた音楽の成長ノートを作成するなど、きめ細やかな教育を実践しました。

作曲家としては、岡本敏明氏に師事し、その指導を受けました。「歩いてゆこう」「もしもコックさんだったなら」「毛虫が三匹」「公園のベンチ」「歩け若人」など、数多くの童謡や合唱曲を手がけました。これらの楽曲のいくつかは、長年にわたり小学校の音楽教科書に採用され、多くの児童に親しまれました。

「もしもコックさんだったなら」は、1985年（昭和60年）から2015年（平成27年）にかけて教育出版の小学校音楽教科書（3年生用）に掲載。
「歩いてゆこう」は、1976年（昭和51年）から1991年（平成3年）にかけて教育出版の小学校音楽教科書（4年生用）に掲載。
「きれいなこころの湖」は、1999年（平成11年）と2001年（平成13年）の教育出版小学校音楽教科書（5年生用）に掲載。

JASRACには編曲作品を含め約80曲が登録されていますが、その他にも「横浜訓盲学院校歌」や「フレーベル先生の歌」、そして折に触れて作曲された短い輪唱曲など、多数の作品が存在します。また、外国曲への日本語詞付けや訳詞も多く手がけました。

深く信仰篤いクリスチャンとしても知られ、その信仰は教育活動や講演にも影響を与えました。講演の場ではしばしば聖書の言葉や詩人・河野進の作品を引用しました。また、キリスト教関連の番組に出演したり、時には所属教会で牧師に代わって日曜礼拝の説教を担当することもありました。

2001年3月に玉川学園を退いた後も、その情熱は衰えず、教育サークルでの指導やハンドベル演奏の普及に尽力しました。晩年に至るまで精力的に各地で講演を行い、教育への変わらぬ思いを伝え続けました。

関連人物

女優の川上麻衣子氏は、玉川学園小学部時代の教え子の一人です。テレビ番組「ウチくる!?」（2002年4月7日放送）に川上氏がゲスト出演した際、サプライズゲストとして小宮路氏が登場し、師弟の絆を披露する一幕がありました。

また、歌手の美空ひばり氏とは、玉川学園小学部の保護者として関わりを持ちました。美空氏に提供された楽曲「おかあさんありがとう」について、1984年3月の小学部卒業祝賀会で歌唱指導を行ったというエピソードも残されています。

主な作曲作品（一部）

歩け若人
丘にのぼれば
歩いてゆこう
きれいなこころの湖
もしもコックさんだったなら
毛虫が三匹
公園のベンチ
どんな小さなめぐみも（作詞：河野進）
夢はともだち
ごろりんすいか
おかあさんありがとう

主な著書

『いのちにふれる=真(まこと)の教育者をめざして』
『つたえよう手のぬくもりを』
『楽しいリズムあそび』
『歩いてゆこう』（作曲集）
* 『真の教育をめざして』

小宮路敏氏は、2018年11月14日に82歳でその生涯を終えましたが、教育者、作曲家、そして信仰者として残した功績は、今も多くの人々の心に息づいています。

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