小山城 (遠江国)

小山城（こやまじょう）

小山城は、静岡県榛原郡吉田町に位置する日本の城です。現在は吉田町の指定史跡となっており、その歴史と景観から多くの人々を魅了しています。

歴史

築城年は明確にはわかっていませんが、今川氏によって築かれた山崎の砦がその起源とされています。今川義元が桶狭間の戦いで敗れた後、この地は武田信玄と徳川家康の間で争奪戦が繰り広げられました。

1568年、武田信玄は約束を破り駿河に侵攻、山崎の砦を攻略しました。それに対抗し、徳川家康は松平真乗に周辺の領地を与え、1570年に砦を奪還することに成功します。しかし、1571年、信玄は2万5千の大軍を率いて再び侵攻し、真乗から城を奪い「小山城」と命名、大熊朝秀を城主として遠州攻略の拠点としました。この時、武田氏によって本格的な城としての改築が行われたとされています。

小山城は、大井川西方の防衛線として機能し、武田氏による高天神城攻略のための重要な拠点となりました。信玄の死後、子の武田勝頼が跡を継ぎますが、長篠の戦いで敗退。その後、徳川軍が小山城を攻撃しますが、城は堅牢で、岡部元信らの防戦によって落城を免れます。小山城は、高天神城への補給路の要として重要な役割を果たしていました。しかし、徳川軍による食糧攻めにより、1581年に高天神城が落城、さらに翌年、織田信長と徳川家康の連合軍による甲州征伐が開始されると、戦況をみて城兵は小山城を放棄し、無血開城となりました。

構造

小山城の縄張りは、甲州流築城家である馬場信春によって行われたとされています。湯日川に面した舌状台地に築かれ、本曲輪、二の曲輪、三の曲輪からなる連郭式の城です。甲州流築城術の特徴である丸馬出しや三重の三日月堀を有しており、特に三重の堀は珍しいものとされています。堀は内側から幅7メートル、9メートル、10メートルで、内側の二重の堀には土塁が築かれています。

現況

1987年、吉田町は小山城址を能満寺山公園として整備しました。公園内には、町のシンボルとして模擬天守「展望台小山城」が建設されました。この天守は3層5階建てで、1、2階は史料展示室として、町ゆかりの歴史資料や甲冑などが展示されています。3、4階は吹き抜け、5階は展望台となっており、町内を一望でき、晴れた日には南アルプス連峰や伊豆半島、御前崎の海岸線、駿河湾まで見渡すことができます。なお、天守閣部分は犬山城を模したもので、400年前の小山城にあったものではありません。

城の西側には、県道230号線が通るトンネルがあり、これは備前守隧道と名付けられています。

交通アクセス

路線バス

JR静岡駅から、しずてつジャストライン特急静岡相良線・相良営業所行きに乗車、「片岡北吉田特別支援学校」で下車、徒歩5分。
JR藤枝駅から、しずてつジャストライン藤枝相良線・相良営業所行きに乗車、「片岡北吉田特別支援学校」で下車、徒歩5分。
JR島田駅から、しずてつジャストライン島田静波線・静波海岸入口行きに乗車、「片岡北吉田特別支援学校」で下車、徒歩5分。

自動車

東名吉田ICから、出口を出て県道34号を右折後、国道150号方面へ約1.8キロメートル南下し、案内板に従い右折後約400メートル。
国道150号から、国道150号「片岡」交差点を島田方面へ北上し、約400メートル。

参考文献

小和田, 哲男『静岡県の城物語』静岡新聞社、1989年。
『図説・遠江の城』郷土出版社、1994年9月。
『あの町この町ウォーキング 中部：しずおかの歴史と文化再発見』OPEN!しずおか。観光推進協議会・しずおか歴史空間ネットワーク推進協議会、2000年。
『静岡県の地名』 22巻、平凡社〈日本歴史地名大系〉、2000年10月。
静岡県観光協会・静岡新聞社 編『ぐるる静岡 ものしり事典』静岡新聞社、2007年5月。
城郭遺産による街づくり協議会 編『戦国時代の静岡の山城:考古学から見た山城の変遷』サンライズ出版、2011年8月。
加藤, 理文『静岡の城：研究成果が解き明かす城の県史』サンライズ出版、2011年11月。
『静岡県の歩ける城70選：初心者も楽しめる名将ゆかりの城跡めぐり』静岡新聞社、2016年12月。

関連項目

馬場信春

外部リンク

展望台小山城（吉田町公式Webサイト）
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