小山政光

小山政光は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した武将であり、御家人です。小山氏の祖として知られています。

政光は、下野国、現在の栃木県南部一帯に広大な所領を有し、下野地域において最大の武士団を率いていました。その勢力は、地域の政治・経済に大きな影響力を持っていたと考えられています。

元々は、武蔵国の在庁官人であり、藤原秀郷の直系の子孫とされる太田行政の子（または孫）として生まれました。当初は太田政光と名乗っていましたが、久安6年（1150年）頃に下野国の小山荘に移り住み、小山氏を興しました。

治承4年（1180年）に源頼朝が挙兵した際、政光と嫡男である朝政は、大番役として京に滞在していました。しかし、政光の後室であり、三男である朝光の母である寒河尼は、頼朝の乳母という関係から、元服前の朝光を伴い、房総で再起を図る頼朝の宿所を訪ねました。当時の慣習として、夫が不在の間は妻が権限を持つことが一般的であり、この寒河尼の行動によって、在地にあった小山氏の武士団は頼朝方につくことになりました。以降、政光は息子たちと共に頼朝の御家人として、鎌倉幕府の成立に大きく貢献しました。

文治5年（1189年）の奥州合戦の際、奥州へ向かう道中の下野の宿舎で、政光は頼朝をもてなしました。その際、熊谷直実の子である直家が頼朝に仕えているのを見た政光は、頼朝に直家について尋ねました。頼朝は、「この者は本朝無双の勇士である熊谷小次郎直家である」と紹介しました。政光がその理由を問うと、頼朝は「一ノ谷の戦いを始めとする平氏追討の戦場で父と共に度々命がけで戦ったからである」と褒め称えました。これを聞いた政光は大いに笑い、「君（頼朝）のために命を捨てるのは、直家に限ったことではありません。ただし、そのような者はろくに郎党を持てないために自分で勲功をあげ、高名手柄にするしかないのでしょう。政光のごときは、ただ郎党を派遣して忠を尽くすだけです。皆の者、今度の戦では先頭に進んで自分自身で手柄を立てて、本朝無双の勇士と褒めていただこうではないか。」と息子らに命じました。

このエピソードは、家人の手柄がそのまま自身の戦功となる大領主である「大名」武士と、自身で戦功を立てるしかない「小名」武士の違いを示す例として知られています。小山政光のような大名武士は、多くの郎党を抱え、その郎党たちの活躍によって自身の勢力を拡大していくことができました。

政光の没年は正確には分かっていませんが、正治元年（1199年）以前に死去したと考えられています。小山氏は、その後も鎌倉幕府において重きをなし、有力御家人として存続しました。

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