小山祐士

小山祐士について

小山祐士（こやま ゆうし、1906年3月29日 - 1982年6月10日）は、広島県福山市に生まれた著名な日本の劇作家です。彼は誠之館中学を卒業した後、慶應義塾大学法学部に進学し、1931年に卒業しました。在学中に小山内薫の影響を受け、卒業後には井伏鱒二に紹介された岸田國士の指導を仰ぎます。

1932年に、仲間の菅原卓やその他の劇作家と共に同人誌『戯作』を創刊し、彼の劇作活動が本格的に始まります。1933年には戯曲『十二月』が築地座で上演され、これが彼の劇作家としての第一歩を印象づけました。続く1934年には『瀬戸内海の子供ら』を発表し、これが第2回芥川龍之介賞候補に選ばれることとなります。この作品は、チェーホフから学んだ技法を駆使し、福山地方の方言による台詞を通じて、戦争の影が漂う瀬戸内地方の青年たちの心情を描写しました。しかし、芥川賞の発表段階で戯曲は選考対象外となり、これが小山の作品の評価につながったと言われています。

1937年には文学座の創立に脚本家として参加し、その後も劇作家として活動を続けます。1942年にはNHKに嘱託され、放送劇の執筆も手掛けるようになりました。戦後、小山の作品はますます社会的な問題に目を向けるようになり、特に原爆や公害問題をテーマにしたものが目立つようになります。

代表作としては、1956年に岸田演劇賞を受賞した『二人だけの舞踏会』があります。この作品は、原爆の影響を受けた人々の痛みを叙情的に描いており、その人間の孤独や苦悩が鮮明に表現されています。その後も『日本の幽霊』（1965年）や『泰山木の木の下で』（1962年）など、社会問題をテーマにした作品を発表し続けました。

小山の作品の特徴は、戦争や原爆による深い悲しみを背負った人々を描写する点にあります。彼は人間の内面的な孤独を鋭く掘り下げ、その心理描写に秀でていました。その作品群は、戦後の日本文学における重要な位置を占めており、後の劇作家たちにも大きな影響を与えました。

彼の栄誉に関しては、1968年に芸術選奨文部大臣賞（文学評論）を受賞し、1975年には紫綬褒章を受章しています。小山祐士は1982年に逝去し、埋葬された冨士霊園には文学者としての業績を讃えられた墓所があります。

主な著作

• - 『瀬戸内海の子供ら』（白水社、1935年）
• - 『魚族 戯曲集』（ぐろりあ・そさえて、1940年）
• - 『光つてる女たち 戯曲集』（世界文学社、1949年）
• - 『一人の女優の歩んだ道』（田村秋子共著、白水社、1962年）
• - 『小山祐士戯曲全集』全5巻（テアトロ、1967年 - 1971年）
• - 『女優の一生』（杉村春子共著、白水社、1970年）

小山祐士の作品は、私たちに人間の苦悩や社会問題を考えさせる貴重な教訓を提供しています。彼の劇作は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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