小川徹 (映画評論家)

小川徹(1923-1991)は、日本の映画・文芸評論家として、戦後日本の文化史に大きな足跡を残した人物です。東京に生まれた小川は、学徒出陣という過酷な経験を経て、東北帝国大学法文学部経済科を卒業。1946年より時事通信社に入社し、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせます。同時期には同人誌『世代』にも参加し、早くから文筆活動に携わっていました。

その後、小川は時事通信社を退社し、1961年には映画評論誌『映画評論』編集部に移籍。後に『映画芸術』誌の編集長を務めるなど、映画評論家としての地位を確立していきます。同時期には『新日本文学』にも寄稿するなど、精力的に執筆活動を続けました。また、映画芸術新社社長も務めるなど、映画界に多大な影響を与えました。

小川徹の評論活動は、映画にとどまりませんでした。その鋭い批評眼は、文学、社会問題にも及びます。特に、日活ロマンポルノ裁判では特別弁護人を務め、日活ビデオや『黒い雪』裁判では証人として出廷。いずれの裁判でも勝訴という結果に貢献するなど、社会的な活動にも積極的に関わっていました。

小川徹の著作は多岐に渡ります。代表的な著作には、『作家と女優』、『大きな肉体と小さな精神 映画による文明論』、『亡国の理想 肉体的映画文明論』、『鞭の用意 映画論集』、『現代日本映画作家論』などがあります。これらの著作において、小川は独自の視点から映画や文学を分析し、時代を鋭く切り取る批評を展開しています。

晩年の作品では、『父のいる場所』や『エクスポーズミーラブリー』など、より個人的な視点を取り入れた作品も発表しています。『それは三島の死に始まる 対談集』のように、他者との対話を通して自身の考えを深めていく試みも見られます。また、『私説アメリカ映画史』では、アメリカ映画史を独自の視点で再解釈した独自の著作を発表しました。他にも『花田清輝の生涯』のように、人物評伝にも取り組むなど、その活動は多様な分野に及んでいます。

小川徹は、単なる批評家としてだけでなく、社会に発言し、影響を与えようとする姿勢を貫きました。その姿勢は、彼の著作だけでなく、裁判での活動などからも読み取ることができます。映画評論家、文芸評論家、そして社会活動家としての小川徹の多面的な活動は、戦後日本の文化史を理解する上で欠かせない存在と言えるでしょう。彼の残した膨大な著作は、現代においても多くの読者に刺激と示唆を与え続けています。小川徹の業績は、これからも日本の文化史における重要な一ページとして刻まれ続けることでしょう。

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