小手森城

小手森城は、現在の福島県二本松市針道に位置していた戦国時代の城館です。現在は、本丸跡に愛宕神社が祀られており、城跡の各所には当時の石垣や曲輪の遺構が残されています。

歴史

小手森城が位置する中通り北部の阿武隈川東部一帯は、塩松と呼ばれていました。16世紀後半には、小浜城主であった大内氏の支配地域であり、小手森城は小浜城の支城として、菊池氏が守備を担当していました。

政宗の撫で斬り

小手森城は、1585年（天正13年）に伊達政宗によって行われた全城兵の殺戮、いわゆる「撫で斬り」の舞台として知られています。

同年、出羽国米沢城主であった伊達政宗は、小浜城主・大内定綱を攻撃するため、河股（現在の福島県伊達郡川俣町）方面から塩松へと侵攻し、小手森城を包囲しました。8月27日、政宗は城への総攻撃を命じ、自らも最前線に立って指揮を執りました。鉄砲八千丁を撃ち込ませるなど、激しい攻撃により、城はその日のうちに落城しました。この際、政宗は城主であった菊池顕綱をはじめとする敵将や兵士だけでなく、城内にいた女や子供までも殺害したと伝えられています。

政宗が伯父である山形城主・最上義光に送った書状には、城主・菊池顕綱や大内定綱の親類など500人を討ち取ったほか、城内にいた者は人だけでなく犬に至るまで全て撫で斬りにし、その数は総勢1,000人に及んだと記されています。ただし、この数については正確な記録が残っておらず、家臣の後藤信康に送った書状には200人、資福寺・虎哉宗乙宛の書状には800人と異なった数字が記されています。また、籠城中には内部からの切り崩しによって降伏した者もいたと考えられています（大内氏の庶流の中には、政宗から本領を安堵されたり、仕えたりした者も存在するため）。

いずれにしても、城内の人々が殺戮されたのは事実であり、この出来事は大内定綱やその一派だけでなく、周辺の大名や住民にも大きな衝撃を与え、「小手森城の撫で斬り」として後世に語り継がれることとなりました。伊達氏ゆかりの祝歌として有名な「さんさ時雨」は、小手森城のある安達郡一帯では現在でも歌われることはありません。

1987年（昭和62年）に放映されたNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』では、第11話「八百人斬り」で、この時の撫で斬りの様子が描かれました。

廃城

小浜城も落城した後、塩松は政宗の所領となりました。しかし、天正16年（1588年）、政宗の命で塩松を守備していた石川弾正が、相馬義胤の誘いに応じて政宗に反旗を翻しました。閏5月16日、政宗は弾正が籠る小手森城を攻撃し、約500人を討ち取り、城を落城させました。この時、伊達軍には、その年の3月に許されて政宗の家臣となった、かつての領主・大内定綱も加わっていました（佐藤貴浩は、定綱が許された一因として、石川弾正の謀反の噂を知った政宗が定綱を味方に引き入れようとした可能性を指摘しています）。

これ以後、小手森城が史料に登場することはなく、この時に廃城になったと考えられています。

関連項目

日本の城一覧
木幡山（天正13年8月の戦いの際に政宗によって焼かれたといわれています）

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