小林宏 (棋士)

小林宏（こばやし ひろし） - 将棋棋士の軌跡

1962年生まれの小林宏氏は、将棋界で活躍した棋士です。三重県出身で、編集者であり文学研究者でもあった小林察氏を父に持ちます。1984年、奨励会三段からプロ棋士四段に昇段。師匠は真部一男九段でした。

華麗なる竜王戦挑戦

小林氏の棋士人生において、竜王戦は大きな舞台となりました。1989年度の第2期竜王戦では、5組ランキング戦で見事準々決勝、決勝と勝ち上がり、本戦トーナメント進出を果たします。決勝では後に永世称号を獲得する佐藤康光氏、森内俊之氏を破るという快挙を成し遂げました。本戦でも1回戦を突破するものの、2回戦で羽生善治氏に敗れ、挑戦権獲得とはなりませんでした。

2年後の第4期竜王戦でも4組ランキング戦で優勝し、本戦トーナメントに進出。日浦市郎氏、島朗氏、塚田泰明氏と強豪を破り、挑戦者決定三番勝負に進みます。しかし、そこで森下卓氏に敗れ、竜王への挑戦は叶いませんでした。それでも、竜王戦挑戦者決定戦進出は、他の棋戦優勝に匹敵するほどの大きな成果でした。その後、自己最高位となる3組に昇級し、8期連続で在籍しました。

棋戦初優勝と順位戦

1992年度には、第11回早指し新鋭戦で優勝。決勝では佐藤康光氏の3連覇を阻止するという金星を挙げ、念願の棋戦初優勝を飾りました。順位戦では、初出場から6期目の1990年度、C級2組で9連勝という圧倒的な成績を収め、C級1組への昇級を決めました。最終局で神崎健二氏に敗れ3位での昇級となりましたが、その後13期連続でC級1組に在籍しました。しかし、B級2組への昇級は叶いませんでした。

引退

2010年度を最後にフリークラスへ転出。2021年度末に引退届を提出、2022年4月19日、上野裕和氏との対局を最後に現役を引退しました。通算成績は999局（435勝564敗）でした。

棋風と人物像

小林氏の棋風は、居飛車、振り飛車、相振り飛車と幅広く、激しい攻め合いを好むオールラウンドプレイヤーでした。

プロ入り直後、棋士番号の決定に関して、同時期に四段に昇段した伊藤博文氏と「登録順位決定戦」を行い、伊藤氏に敗れ、棋士番号は167番となりました。

師匠である真部一男九段とは年齢が近く、師弟関係は非常に強固なものでした。真部九段の死去時には追悼文を寄稿し、その死期を目前にした対局の様子を綴った文章は、2008年度の升田幸三賞特別賞を受賞しました。

また、小林氏は熱心な登山家で、奨励会時代には度重なる山岳遭難事故にも遭っているなど、波乱万丈な人生を送りました。

まとめ

小林宏氏は、竜王戦での活躍や棋戦優勝、そして順位戦での長く安定した成績を残した実力者でした。激しい攻め合いを身上とする棋風、そして登山家としての顔も持ち合わせた、個性豊かな棋士でした。彼の将棋人生は、多くの将棋ファンに記憶されるに値するものです。

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