小林栄

小林栄：野口英世の恩師、そして猪苗代日新館の創設者

小林栄は、1860年（万延元年）福島県猪苗代町で会津藩士の家に生まれました。明治元年の戊辰戦争には兄と共に従軍するも、兄は戦死。その後、明治9年（1876年）に福島師範学校（現：福島大学人間発達文化学類）に入学、明治11年（1878年）には首席で卒業し、教員の道を歩み始めます。

猪苗代高等小学校では主席訓導（教頭）や校長を歴任。ここで小林は、後の世界的な医学者となる野口英世と出会います。極貧の農家に生まれた野口は、並外れた学力を持つ一方、経済的な理由で進学を諦めかけていました。しかし、小林は野口の才能を見抜き、高等小学校への進学を支援。自ら学費を援助するなど、その期待の大きさが伺えます。野口も小林の期待に応え、常に首席の成績を収めました。

野口は幼い頃、囲炉裏で左手に大火傷を負い、指が癒着していました。小林は高等小学校4年生の野口のために、治療費を集めるため校内で募金活動を行い、手術を成功させました。その後も、野口が医師を目指すにあたり、会陽医院での書生生活を提案するなど、全面的に支援を続けます。

野口が故郷を離れてからも、小林は野口の家族を支え続けました。野口は生涯に渡り小林を「父上様」と慕い、深い師弟関係を築きました。さらに、野口が改名を決意した際、小林は「英世」という名を授けたという逸話も残されています。小林の尽力は、野口英世の偉業に大きく貢献したと言えるでしょう。

明治44年（1911年）、小林は猪苗代日新館を創立。教育者としての信念を貫き、多くの生徒を育成しました。昭和15年（1940年）、79歳で亡くなり、その直後に猪苗代日新館も廃校となりました。

小林栄の生涯は、教育者としての熱意と、生徒への深い愛情に満ち溢れています。特に野口英世との交流は、数々の逸話として語り継がれ、野口の伝記には必ず小林栄の名が登場します。彼の教育者としての功績は、野口英世という偉大な人物を輩出したことのみならず、猪苗代日新館の創設という教育機関への貢献にも表れています。彼の教育理念と実践は、今もなお多くの人々に深い感銘を与え続けています。

小林栄の著作として『野口英世の思出』（岩波書店、1941年）があり、彼の経験や想いが克明に綴られています。また、映画『遠き落日』（1992年）では、俳優仲代達矢が小林栄を演じています。これらの資料を通じて、小林栄の人となりや業績をより深く理解することができるでしょう。小林栄の生涯は、教育者としての理想を追求し、困難を乗り越えながら生徒の育成に尽力した、感動的な物語です。彼の功績は、これからも多くの人々に記憶され、未来の教育者たちにとっての指針となるでしょう。

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