小林正美

小林 正美（こばやし まさよし）

小林正美は1943年に東京都で誕生し、中国思想の研究者として名を馳せている。彼は早稲田大学の名誉教授であり、公益財団法人国際文化会館の理事も務めている。彼の専門は、六朝時代における儒教、仏教、道教の交渉史であり、近年は特に道教の斎法儀礼についての研究に取り組んでいる。

経歴

小林教授は早稲田大学第一文学部で学んだ後、1967年に卒業し、その後大学院へ進む。彼は栗田直躬教授の指導の下で中国仏教について研究を行い、文学研究科の東洋哲学専攻博士課程を修了した。その後、早稲田大学に教員として就職し、その地で道教研究を開始した。1983年にはハーバード・イェンチン研究所への招聘研究員としてアメリカに渡り、2年間の滞在を経て帰国。1989年には『東晋・劉宋期の葛氏道と天師道の研究』を提出し、文学博士号を取得した。

その後も彼は北京大学での交換研究員としての活動を経て、2002年には早稲田大学の道教研究所所長に就任。2013年3月に退職し、名誉教授となった。彼の教え子には、天台宗や駒澤大学、國學院大学、慶應義塾大学などに進む研究者たちがいる。彼らは、彼の広範な知識と指導力から多大な影響を受けている。

研究内容・業績

小林教授の学風は、その正確かつ厳密な学術的態度に特徴付けられている。特に、彼は津田左右吉の「思想史的方法」を用い、文の「語句」ではなく「意味」を重視している。また、彼は「歴史的概念」と「現代的概念」を明確に区別し、概念規定を行った上で自らの持論を展開している。初期道教に関する研究では、彼は「新パラダイム道教史」の提唱者として知られ、従来の通説に対する独自の視点を持っている。

特に、彼は劉宋の天師道改革派を道教の成立において中心的な要素とみなし、それ以前の道家思想や民間信仰は道教と呼ぶことができないと主張している。彼の立場においては、道教とは「教祖」と「教典」という二つの要素が必要であり、歴史的に実在した「三教」の一つとしての道教は劉宋期の天師道改革派から始まるとされる。

小林説とその評価

小林教授の学説は、これまでの学会の常識に真っ向から反するものであり、そのために多くの批判を受けた。しかし2000年代後半からは、彼の業績が再評価され、中国の有力な学者や若手研究者からも高く評価されている。彼は道教史における新しい視点を提供しており、その研究は学問の進展に大きく寄与している。

主な著作

小林教授は多くの著作を手掛けており、単著や編著として以下のような作品がある。

• - 『道教の斎法儀礼の思想史的研究』（知泉書館, 2006）
• - 論文一覧には、「三教交渉における『教』の観念」や「劉宋における靈寶經の形成」などが含まれ、彼の広範な研究を示している。

このように、小林正美教授は中国思想研究において非常に重要な人物であり、彼の業績は今後の研究においても影響を与える存在となり続けるだろう。

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