小栗一雄

小栗 一雄：内務官僚としての足跡

小栗一雄（おぐり かずお、1886年7月8日 - 1973年1月20日）は、昭和時代に活躍した日本の内務官僚であり、県知事や警視総監としての役割で知られています。静岡県出身の彼は、1903年に静岡中学を卒業し、続いて第一高等学校に進学。1911年には東京帝国大学法科大学法律学科（独法）を卒業後、農商務省に入省し、林務属としてのキャリアをスタートさせました。

彼は文官高等試験行政科試験に合格し、その後は山林事務官補として活動を開始します。1914年には文部大臣一木喜徳郎の秘書官に就任、文部省参事官も兼任し、以降は多くの内務関連のポジションを歴任します。特に京都府視学官や東京府視学官、さらには奈良県警察部長長崎県警察部長を経て、大阪府書記官及び警察部長としても活動しました。

1930年8月には奈良県知事に就任し、その後台湾総督府に転任することになります。1932年6月には福岡県知事に就任し、さらに1934年10月には警視総監を務めました。警視総監時代には、大規模な暴力団員や政治結社の摘発を行うなど、目覚ましい業績を上げていますが、1936年に二・二六事件が発生すると、警視総監を休職することとなり、事実上の更迭となりました。

その後、太平洋戦争中の1942年には陸軍司政長官としてボルネオ守備軍司令部付顧問に就任し、1944年までその職に在任しました。この時期、彼はマライ軍政監部や陸軍省軍務局付も兼任しておりました。

彼の経歴には数多くの逸話があります。農商務省同期には著名な実業家や官僚が含まれ、特に吉田茂とは深い友情がありました。加えて、中村汽船の創業者である中村精七郎との関係も興味深く、彼の妻同士が姉妹であり、彼自身も中村家に感謝の意を示しています。加えて中村が米内光政の支援者であり、小栗も米内との親交があったことが記録されています。

また、警視総監時代には著名な作家夢野久作と面会する機会があり、その際には久作の作品に対する大阪水平社からの抗議についてのやりとりも興味深いエピソードです。1935年には、夢野が抗議を受けた際、小栗は特高課を利用する意思を示すなど、彼の職務に対する姿勢がうかがえます。

晩年には1943年に正四位を受勲し、長い政治的キャリアを持った小栗一雄は、1973年にその生涯を閉じました。彼の歴史的な貢献や多彩な人間関係は、今日の日本の官僚制や政治の理解においても重要な要素となっています。

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