軍務局

軍務局について

軍務局は、大日本帝国の陸軍省と海軍省に置かれた、軍政を担う中核的な組織です。両省において、政策立案、兵員・予算の獲得を主導し、軍事行政の中枢を担いました。特に、陸軍省の軍務局長は、大臣、次官に次ぐ重要な地位を占め、政治的な影響力も非常に大きなものでした。

軍務局の役割と権限

軍務局の主な役割は、軍政の執行、省の政策形成、そして兵員と予算の確保でした。しかし、公式には軍務局や局長の政治への関与は、国務大臣である軍部大臣の補佐を目的とした限定的なものとされていました。しかし実際には、軍務局は政治的な動きに深く関与し、特に満州事変以降は、局長が政治的な発言を行い、国政にも大きな影響を与えるようになりました。

陸軍省軍務局

歴史

陸軍省軍務局は、1871年に兵部省に設置された軍務局を前身とします。当初は人事や総務を担当する組織でしたが、変遷を経て1890年に軍務局として再編されました。局長職は、当初陸軍次官が兼任していましたが、1900年以降は専任となりました。

組織と機能

陸軍省軍務局は、編制、動員計画、戒厳、軍紀、徴兵、憲兵などを所管しました。当初は複数の課で構成されていましたが、組織改編を経て、軍事、兵務、防備、馬政の4課体制となりました。その後、二・二六事件後の粛軍に伴う組織再編で、軍事課と軍務課の2課体制となり、総動員体制の企画立案にも関与しました。太平洋戦争末期には、戦備課も設置され、物資の生産統制も行いました。

政治的関与

陸軍省軍務局は、政策や予算実現のため、しばしば政治的な活動を行いました。特に、陸軍の政治関与は顕著であり、局員は「政治将校」と揶揄されることもありました。明治期の2個師団増設問題から始まり、満蒙独立運動、二・二六事件後の粛軍問題など、度々政治的な問題に関与しました。

歴代局長

以下に陸軍省軍務局の主な歴代局長を記します。

桂太郎
児玉源太郎
田中義一
杉山元
小磯國昭
永田鉄山
武藤章

海軍省軍務局

歴史

海軍省軍務局も、陸軍省と同様に、旧兵部省の軍務局を前身とします。海軍省軍務局は、何度か廃止と再設置を繰り返しましたが、1886年に設置されたものが、1945年まで存続しました。

組織と機能

海軍省軍務局は、編制、戒厳、軍紀、教育、水路測量、儀式、海上保安、艦政などを所管しました。日露戦争時は少人数でしたが、その後規模が拡大しました。課の名称は数字で示され、編制、国防政策、機関、国防思想の普及などを担当しました。局長は現役将官が務めました。

政治的対立

ロンドン海軍軍縮条約を支持した条約派の主要メンバーが軍務局長を務めたこともあり、軍務局長のポストは、条約派と艦隊派、あるいは日米開戦派と反対派の争奪の的となりました。

歴代局長

以下に海軍省軍務局の主な歴代局長を記します。

樺山資紀
山本権兵衛
斎藤実
加藤友三郎
井上成美

まとめ

軍務局は、日本の軍政を支えた重要な組織でした。特に、陸軍省軍務局は、政治的な影響力が非常に大きく、軍部の政治関与を象徴する存在でした。両軍務局は、それぞれの省において、軍事政策の策定と実行に大きな役割を果たしましたが、その影響は、日本の歴史に深く刻まれています。太平洋戦争終結とともに、軍務局は両省とともに廃止されました。

参考文献

木坂順一郎「軍務局」『日本近現代史事典』
北岡伸一『政党から軍部へ』
黒沢文貴「軍務局」『日本史大事典 2』
野村実「海軍省軍務局」『国史大辞典 3』
* 藤原彰「陸軍省軍務局」『国史大辞典 14』

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