水谷氏

水谷氏：結城氏を支えた一族から大名へ

水谷氏は、藤原北家秀郷流近藤氏の流れを汲む氏族です。戦国時代から江戸時代初期にかけて、結城氏の重臣として活躍し、特に結城四天王の一人、水谷勝俊の一族が知られています。

結城合戦と水谷氏

水谷氏の名が歴史に登場するのは、永享9年（1437年）の結城合戦です。鎌倉公方足利持氏と関東管領上杉憲実の対立から勃発したこの戦いで、持氏の遺児である春王丸、安王丸は結城氏を頼り、結城城に入城します。結城家の家臣たちが動揺する中、水谷伊勢守時氏（みずのや いせのかみ ときうじ）は「主君を見捨てることは武士道に反する」と主張し、主君と共に戦う道を選びました。

結城城は幕府軍の猛攻に耐えましたが、永享13年（1441年）に落城。春王丸、安王丸は捕らえられ殺害され、時氏も結城氏朝、持朝と共に討ち死にしました。この戦いでは、水谷大炊助という人物も討ち死にしています。

戦国時代から江戸時代へ

1478年（文明10年）頃、水谷勝氏が下館城を築城し、水谷氏代々の居城となりました。1545年（天文14年）には、水谷正村が久下田城を築城し、宇都宮氏の攻撃を撃退しました。そして、水谷勝俊の時代、関ヶ原の戦いの功績により、結城氏から独立し、常陸国下館3万1千石を与えられ、大名となりました。その後、寛永の高直しによって石高は4万7千石に改められています。

1639年（寛永16年）には備中国川上郡、播磨国美嚢郡へ、1642年（寛永19年）には備中国松山5万石に移封され、松山藩政の基礎を築きました。ちなみに、備中松山城の現存天守は水谷氏によって改修されたものです。

1693年（元禄6年）、備中松山水谷家の3代勝美に後継者がいなかったため、弟の勝時を後継者にしようとしましたが、幕府に認められず、水谷家は改易となりました。しかし、勝時は後に3千石を与えられ、旗本として家名を存続させ、旗本水谷家は明治維新を迎えるまで続きました。

水谷伊勢守勝隆は、弁才天信仰が篤く、1536年（天文5年）に天海大僧正と協力して上野不忍池に弁財天社を建立しました。また、水谷家の下屋敷には屋敷神として弁財天が祀られ、これが現在の下谷七福神の一つ、朝日弁財天（水乃谷弁天院）となりました。

水谷氏の出自

水谷氏の出自には諸説ありますが、一説には鎌倉時代に藤原秀郷の七世の孫、島田景頼の子である親実が、陸奥国岩城郡水谷の地頭となり、水谷を称したのが始まりとされています。その後、親実の子孫は関東に勢力を広げ、結城氏に仕えるようになったとされています。

また、小山氏の乱後、再興された小山氏の当主として結城氏から小山泰朝が送られた際に水谷氏もこれに従い、時期によって小山氏と結城氏、両方の家臣となっていた時代があったとされています。

水谷氏の軍記として『水谷家譜』がありますが、江戸時代に成立した同書には、東京大学史料編纂所と静嘉堂文庫に全く異なる内容のものが存在します。これは、結城氏との関係が強かった時期と独立した大名として確立した時期にそれぞれ編纂されたものと考えられています。

系譜

水谷氏の系譜については、以下の資料をご参照ください。

武家家伝＿水谷氏

参考文献

高橋恵美子『中世結城氏の家伝と軍記』勉誠出版、2010年10月。

関連項目

下館藩
備中松山藩
多賀谷氏
山川氏
* 天海

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