小森厚

小森厚（1928年1月15日 - 2002年4月3日）は、日本の動物園職員としてキャリアを積みながら、精力的な文筆活動を展開した人物です。インドのボンベイに生まれ、その後長崎県で幼少期を過ごしました。

彼の動物園での経歴は、東京都立上野高等学校夜間部に在学中から始まります。学校に通いながら上野動物園に就職し、動物の飼育に携わりました。1964年には、多摩動物公園へ異動。ここでは飼育課長を務めるなど、より責任ある立場で動物たちのケアや管理に深く関わりました。そして、1979年には再び上野動物園に戻り、飼育課長に就任。長年にわたり培った豊富な経験と知識を活かし、日本の中心的な動物園の一つで重要な役割を果たしました。

1984年に動物園を退職した後も、彼は日本の動物界への貢献を続けました。日本動物園協会の事務局長に就任し、日本の動物園全体の発展に尽力。さらに、日本動物園水族館協会の専務理事、そして顧問を歴任するなど、業界の要職を歴任し、その知見は広く活用されました。

動物園職員としての実務経験に基づいた彼の文筆活動は、多くの人々に動物への理解を深める機会を与えました。専門的な視点と分かりやすい語り口で、子どもから大人まで楽しめる数々の著作を発表しています。特に、1966年には小原秀雄、浦本昌紀との共著である『現代の記録・動物の世界』で毎日出版文化賞を受賞するなど、その功績は高く評価されました。

彼が生涯を通じて残した主な著作や編著、翻訳は以下の通りです。

著書

『現代の記録動物の世界 第5巻 動物を飼育する』紀伊国屋書店（1964年）
『ムササビを飼う』（安藤真樹、門屋一雄え）小峰書店 自然科学シリーズ（1975年）
『動物のおやこ』小学館 小さな科学者シリーズ（1976年）
『上野動物園』郷学舎 東京公園文庫（1981年）
『どうぶつのおかあさん』（藪内正幸絵）福音館書店（1981年）
『どうぶつ学名散策』東京書籍 東書選書（1983年）
『動物園ってたのしいな』（浅川浩司絵）岩崎書店（1987年）
『聖書の中の動物たち』日本基督教団出版局（1992年）
『もう一つの上野動物園史』丸善ライブラリー（1997年）
『はな子が逃げた 私の動物園史』東京動物園協会（2002年）

共編著

『動物の図鑑』（古賀忠道、今泉吉典共著、白木正一等絵）小学館の学習図鑑シリーズ（1958年）
『現代の記録動物の世界 第1巻 20世紀の新発見』（浦本昌紀、小原秀雄共著）紀伊国屋書店（1964年）
『現代の記録動物の世界 第2巻 変わりゆく動物界』（浦本昌紀、小原秀雄共著）紀伊国屋書店（1965年）
『鳥のふしぎと飼いかた・ならしかた』（林寿郎、松本喬史共著）あすなろ書房（1965年）
『みぢかな小動物のふしぎと飼いかた』（林寿郎、杉浦宏共著）あすなろ書房（1966年）
『ペットの飼育事典 ホーム・コンサルタント』（久田迪夫、矢島稔共編）小学館（1971年）
『小学館の学習百科図鑑 5 動物の図鑑』（編）（1972年）

翻訳

ウイリアム・スミス編『聖書動物大事典』（藤本時男共編訳）国書刊行会（2002年）

小森厚は、動物園の現場で動物たちと向き合い続けた経験を基に、教育者、文筆家としても多大な貢献を果たしました。彼の著作は今なお、動物や自然への興味を引き起こす貴重な資料となっています。

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