小沢圭次郎

小沢圭次郎（おざわ けいじろう）

小沢圭次郎は、天保13年（1842年）に生まれ、昭和7年（1932年）に没した日本の造園家、作庭家、教育者、文筆家です。号は酔園。近代日本の造園研究における先駆者として、その名を歴史に刻んでいます。

生涯

小沢圭次郎は、桑名藩の医師である小沢長安の次男として、江戸の桑名藩下屋敷で生まれました。幼少期より医学や漢学を学び、長崎遊学の際には蘭学も修めました。戊辰戦争後は、藩命により英語を学び、海軍兵学校や文部省で教鞭をとりました。その後、東京師範学校で校長心得や校長補佐を歴任し、教育者としての道を歩みました。また、東京学士会院書記を務めるなど、多岐にわたる分野で活躍しました。

造園研究においては、数十年にわたり日本造園史を研究し、晩年まで「園林叢書」の編纂を志しました。『国華』に「園苑源流考」を連載し、その後『建築工芸雑誌』に「庭園源流略考」としてまとめました。さらに、「後楽園源流略記」や「大名の庭」などの論文も発表し、その研究成果を広く世に知らしめました。また、東京府立園芸学校で講師を務めるなど、後進の育成にも尽力しました。

1932年、91歳でその生涯を閉じましたが、彼が収集した造園・園芸関係の古典籍は「小沢文庫」として国立国会図書館に所蔵され、貴重な文化遺産として今に伝えられています。

業績

小沢圭次郎は、数多くの庭園設計や公園整備に携わり、その業績は多岐にわたります。

庭園研究: 『明治園芸史』に収録された「明治庭園記」は、幕末から大正初期にかけての皇室や大名、政治家、豪商などの庭園の変遷や現状を詳細に記録したものであり、当時の庭園を知る上で非常に重要な資料となっています。多くの写真や図面とともに、公園の数も詳細に記録されており、当時の状況を窺い知ることができます。
作庭理論: 小沢は、設計を「設景」と表現しました。また、『作庭記』の作者を橘俊綱であると考証・示唆し、謎の人物である増円の著書『山水並野形図』を紹介するなど、作庭に関する深い知識と見識を示しました。
* 庭園設計・公園整備: 伊勢神宮内苑及外苑の築造・改修、奈良公園の改良案、堺市の大浜公園、桑名市の九華公園などの設計・整備に携わりました。また、日比谷公園の新設計画にも参加し、日本式庭園を提案しましたが、これは実現には至りませんでした。その他、麻布の三条公爵邸庭園、天王寺公園内日本庭園、別府市の旧別府公園、栗林公園の改修、ロンドン郊外における日英同盟記念博覧会の日本風林泉の設計など、国内外で数多くの庭園設計を手がけました。

小沢文庫

小沢が編纂を計画していた「園林叢書」のために蒐集した造園・園芸関係の古典籍は、「小沢文庫」として国立国会図書館に買い上げられ、古典籍資料室で保管されています。この文庫は、小沢の業績を後世に伝える上で重要な役割を果たしています。

小沢圭次郎は、日本の造園史において重要な人物であり、その研究と実践は、今日の造園文化に大きな影響を与えています。

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