小湊鉄道長南営業所

小湊鉄道 長南営業所

小湊鉄道バス部長南営業所は、千葉県長生郡長南町長南に拠点を置く、同社のバス事業における重要な役割を担う営業所です。広範なエリアを管轄しており、その傘下には複数の車庫が存在します。具体的には、大網白里市や白子町内の路線をカバーする白子車庫、大多喜町周辺の地域を受け持つ大多喜車庫、勝浦市内の路線を担当する勝浦車庫があります。加えて、車両は配置されず、主に折返し待機場所として機能する茂原車庫も含まれています。

歴史的背景

小湊鉄道が1917年（大正6年）に創立され、一般路線バスの運行を開始するとともに、長南地区もそのサービス網に組み込まれました。昭和初期には、長南から千葉や茂原を結ぶ路線が既に存在していました。一方、1930年（昭和5年）に茂原 - 笠森寺間で鉄道路線を運営していた南総鉄道もバス部門を持っていました。南総鉄道の鉄道路線は1939年（昭和14年）に廃止されたものの、バス部門は「笠森自動車」として事業を継続します。第二次世界大戦中の1944年（昭和19年）には、戦時統合の流れの中で小湊鉄道へと統合されました。この統合の過程については、一旦小湊鉄道の傘下にあった袖ヶ浦自動車会社が笠森自動車を買収し、その後小湊バスに統合されたとする記録も存在します。いずれの経路をたどったにせよ、笠森自動車は同年中に南総鉄道の本社跡地に移転し、「小湊バス茂原営業所笠森車庫」として新たなスタートを切りました。この笠森車庫には、当時25名の運転手と30名の車掌が利用する宿舎も整備されていました。

年表としては、1971年（昭和46年）6月に笠森車庫が現在の場所に移転し、「長南車庫」として発足しました。その後、1996年（平成8年）8月16日には、茂原営業所と大多喜営業所が車庫へと組織変更される一方、長南車庫が「長南営業所」へと昇格し、現在に至る体制の基盤が築かれました。近年では、2013年（平成25年）9月14日に大網駅発着の一部路線が東金営業所へ移管されましたが、車両のメンテナンス業務などは引き続き長南営業所で行われています。また、2021年（令和3年）2月25日からは、白子車庫管轄の一般路線でも交通系ICカード（PASMOやSuicaなど）の利用が開始され、利便性が向上しました。

現在の路線網

長南営業所は、管轄下の各車庫と共に、多岐にわたる一般路線、高速バス、コミュニティバス、季節運行路線を運行しています。主な発着地は茂原駅、大網駅、本納駅、上総一ノ宮駅、上総牛久駅、勝浦駅、里見駅、大多喜地区など広範囲に及びます。

茂原駅を発着する一般路線は、長南営業所方面、長柄方面、睦沢方面、一宮方面、大網方面など多様な系統があります。特に茂原駅南口から長南営業所を経由して蔵持方面へ向かう系統は主力路線群の一つです。また、茂原駅東口と白子車庫を結ぶ路線も、白子車庫管轄路線の中心的存在です。白子車庫担当路線では、大網駅から白里海岸方面へ向かう路線も運行距離が長いことで知られています。

里見駅発着路線は、市原鶴舞バスターミナルや市原ぞうの国、市原湖畔美術館方面へのアクセスを提供しており、土休日と平日で一部経路が異なります。

大多喜車庫は、茂原駅、上総一ノ宮駅、上総牛久駅、勝浦駅といった周辺の主要駅から大多喜方面への路線、および大多喜地区内の路線を多数運行しています。養老渓谷方面への路線も運行しており、観光ルートとしても利用されています。

勝浦車庫は、勝浦駅を中心に、塩田病院や興津駅方面、海岸線沿いの集落を結ぶ路線などを運行しています。近年、経路変更や新設された系統もあります。

高速バスについては、長南営業所が茂原駅から羽田空港・横浜駅へ向かう路線や、御宿・勝浦・大多喜方面から市原鶴舞バスターミナルを経由して東京駅八重洲口へ向かう路線を担当しています。白子車庫は蘇我駅・五井駅から羽田空港への路線や、白子地区から東京駅八重洲口・千葉駅へ向かう路線などを運行しています。いずれの高速バスも交通系ICカードに対応しています。

このほか、大網白里市、茂原市、長柄町、長南町、睦沢町、いすみ市、市原市（一部地域）からの委託を受けて、各地域のコミュニティバスや巡回バスも運行しています。季節運行路線としては、「房総さとやまGO」のように、観光振興を目的としてJR久留里線やいすみ鉄道との連携を図る周遊ルートが秋期などに運行されています。

過去には、茂原駅とちはら台駅を結ぶ長距離路線や、長南営業所から三川へ向かう路線、大網駅から清水経由で白子車庫へ向かう小型車運行路線、勝浦駅から御宿駅へ向かう路線など、様々な路線が運行されていましたが、利用状況や経路変更などにより廃止となっています。

車両について

長南営業所および管轄車庫には、日野自動車、いすゞ自動車といった主要国内メーカーの一般路線車両が配置されています。所属車両の多くは塩田営業所からの転属車ですが、白子車庫には西武バスからの、大多喜車庫や長南営業所には横浜市営バスからの移籍車両も活躍しています。特に、千葉県内のバス事業者としては珍しく、現在でも床が木製の車両が多く残っていることが特徴として挙げられます。しかし、2015年頃からはLED方向幕を備えた転属車が増加し、木床車両や幕車の置き換えが進められています。高速バス車両は当初より交通系ICカードに対応していましたが、一般路線車も2021年2月以降、順次対応化が進んでいます。かつてICカード非対応だった頃は、転入してきたICカード対応運賃箱搭載車から一度非対応のものに交換してから運用するといった対応も行われていました。

これらの車両が、長南営業所が管轄する広大なエリアの地域住民の生活を支え、また観光客の移動手段として機能しています。

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