小澤得二

小澤得二：映画の黎明期を彩った多才な映画人

小澤得二（おざわ とくじ、1893年10月11日 - 1979年4月19日）は、日本の映画監督、脚本家、編集技師であり、かつては俳優としても活動していました。新漢字では小沢得二と表記されます。本名は小澤得壽（おざわ とくじゅ）です。

新劇俳優から映画監督へ

1893年に生まれた小澤は、1913年に上山草人が主宰する近代劇協会に参加し、5年間新劇俳優として舞台に立ちました。1920年、国際活映に入社し、新派系の演出家・脚本家である桝本清に師事します。1923年2月15日公開の『涙の親子』で監督デビューを果たしたとされていますが、実際にはその前年、1922年5月20日に公開された労資協調会宣伝映画『人の心』を監督した記録が残っています。

同年、松竹蒲田撮影所へ移籍し、移籍第一作として『お転婆娘』を監督。しかし、1923年9月1日の関東大震災により撮影所が被災、京都の下加茂撮影所へ機能を移転することになり、小澤も京都へ移動します。1924年春に蒲田撮影所が復興すると再び戻りますが、その年の秋には帝国キネマ演芸へ移籍し、大阪の小坂撮影所に所属しました。

多様な映画製作

1925年、小坂撮影所は閉鎖され、新たに東邦映画製作所が設立されますが、すぐに解散。その後、直木三十三（後の直木三十五）が主宰する聯合映画芸術家協会に参加し、麻生豊の漫画を原作とした『ノンキナトウサン 活動の巻』を監督しました。1927年には、阪東妻三郎、立花良介、カール・レムリによる合弁会社・阪妻・立花・ユニヴァーサル聯合映画に参加。合弁解消後は、阪東妻三郎プロダクションの太秦撮影所（現在の東映京都撮影所）で、現代劇を中心に演出しました。

1928年、小澤は独立し、小澤映画聯盟を設立。女優の五月信子らと共に、長谷川伸や佐藤紅緑の小説を原作とした映画を製作・監督しましたが、長くは続きませんでした。1929年の解散後、東京へ移り、河合映画製作社に入社。同年10月11日公開の『血の曲芸団』を皮切りに、短期間で多くの映画を量産しました。

1931年からはしばらく東京シネマ商会で数本を手がけた後、河合映画へ復帰。1933年に河合が大都映画へ改組されると、そのまま同社に在籍しますが、1934年に退社し、記録映画（ドキュメンタリー映画）の世界へと転身します。

記録映画への転身と晩年

田中純一郎の『日本映画監督全集』には、1938年8月4日公開の『起ち上る蒙古』を最後に引退したとありますが、実際にはその後も記録映画に関わっていました。

第二次世界大戦後も映画界との関わりは続き、1952年には『文楽 人形遣いの妙技』に、1955年には『カメラ誕生』の演出を手がけています。

1979年4月19日、脳血栓のため死去。満85歳でした。

小澤得二は、映画の黎明期から戦後にかけて、様々なジャンルの映画製作に携わった多才な映画人でした。彼の作品群は、日本の映画史における貴重な記録であり、その功績は決して忘れられることはないでしょう。

主なフィルモグラフィー

人の心 (1922)
涙の親子 (1923)
お転婆娘 (1923)
ノンキナトウサン 活動の巻 (1925)
血の曲芸団 (1929)
起ち上る蒙古 (1938)
新しき生活 (1940年代)

参考文献

日本映画俳優名鑑 昭和九年版 (映画世界社, 1934年)
* 日本映画監督全集 (キネマ旬報社, 1976年)

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