河合映画製作社

河合映画製作社：昭和初期の映画界を彩った短命の映画会社

河合映画製作社は、1920年代後半から1930年代初頭にかけて存在した日本の映画会社です。設立者の河合徳三郎は、もともと土木建築業を営んでいましたが、映画館経営を経て映画製作に乗り出しました。徹底した低予算主義で、娯楽色の強いサイレント映画を量産したことで知られています。

設立の背景

1927年4月、河合徳三郎はまず映画配給会社「河合商会」を設立しました。その後、同年12月に「河合プロダクション」へと改組し、翌1928年5月には映画製作部門として「河合映画製作社」を立ち上げました。この背景には、河合徳三郎が1923年に映画館「浅草キネマ倶楽部」を手に入れたことが大きく影響しています。また、国際活映（国活）の撮影所改修工事を請け負ったことがきっかけとなり、スタジオを買収して映画製作に乗り出すことになりました。

短期間での量産体制

河合映画製作社は、設立当初から量産体制を敷きました。1928年には64本、1929年には81本、1930年には85本、1931年には103本、1932年には99本と、短期間で多数の映画を製作しました。これは、徹底した低予算主義と、複数の撮影所を同時稼働させることで実現しました。東京の町屋と巣鴨に撮影所を構え、特に巣鴨撮影所は旧国際活映の施設を買収して活用していました。

作品の特徴

河合映画の作品は、娯楽色の強いサイレント映画が中心でした。時代劇、現代劇、喜劇など、様々なジャンルの作品を製作しましたが、特に人気を集めたのは、低予算ながらも大衆の娯楽ニーズに応えた作品でした。具体的な作品としては、松本英一監督・里見明主演の『青春散歩』や、悪麗之助監督の『ふくろう組』などが挙げられます。また、当時16歳だった琴糸路をスカウトして主演に抜擢したことも話題となりました。

大都映画への発展的改組

1933年6月、河合映画製作社は発展的に改組し、「大都映画」となりました。最後の作品は、吉村操監督の『悲惨の鉄路』で、翌週には大都映画の設立第1作として根岸東一郎監督の『新籠の鳥』が公開されました。大都映画となってからも、年間100本以上の映画を製作し続け、戦時統合で大映となるまで、通算15年間で1,294本（1,325本という説もあり）の作品を送り出しました。

スタッフと俳優

河合映画には、多くの映画人が集まりました。監督としては、丘虹二、鈴木桃作、曽根純三、中島宝三、亀井清一、松本英一、古海卓二、悪麗之助などが活躍しました。俳優では、吾妻三郎、杉狂児、鈴木澄子、大岡怪童、永井柳太郎、そして河合・大都を代表する女優となった琴糸路などが所属しました。また、脚本家としては、八尋不二や三村伸太郎が名を連ねています。

関連事項

河合映画製作社は、その後の大都映画、新興キネマ、大映へと繋がる重要なルーツの一つです。特に、大都映画は、河合映画の低予算量産体制を受け継ぎ、戦前の大衆娯楽映画を支える役割を果たしました。また、大山デブ子のような個性的な女優も輩出しています。

まとめ

河合映画製作社は、短命ながらも日本の映画史に大きな足跡を残した会社です。低予算ながらも大衆のニーズに応える娯楽作品を量産し、その後の日本映画界に大きな影響を与えました。その歴史は、昭和初期の映画界の多様性と活気を象徴するものと言えるでしょう。

参考資料

「幻のB級　大都映画がゆく」本庄慧一郎 著　集英社　2009年1月発行
「日本映画史」第1巻　421～425p [新興キネマと大都映画の大衆映画」　佐藤忠男著　岩波書店　1995年3月発行
* 「世界映画大事典」236P 河合映画/大都映画の項　監修　岩本憲児　高村倉太郎　編集　岩本憲児　奥村賢　佐崎順昭　宮澤誠一　(株)日本図書センター　2008年6月発行

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