小田治久

小田治久（おだ はるひさ）

小田治久は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した武将で、小田氏の第8代当主です。生年は1300年（正安2年）とされており、没年は1353年（正平7年/文和元年）です。初めは高知と名乗っていましたが、後に後醍醐天皇から一字を賜り、治久と改名しました。官位は宮内権少輔、尾張権守、常陸介を歴任しています。

生涯

治久は、常陸国（現在の茨城県）にて、第7代当主・小田貞宗の子として生まれました。一説には1283年生まれともされていますが、父・貞宗の没年との矛盾から、1300年生まれとする説が有力です。初名の「高知」は、当時の鎌倉幕府執権であった北条高時より偏諱を受けたものと考えられています。これは、父・貞宗が北条貞時（高時の父）より偏諱を受けていたことからも裏付けられます。

1327年（嘉暦2年）には、父の代理として陸奥国（現在の青森県、岩手県、宮城県、福島県の一部）の安藤氏の乱鎮圧で功を挙げ、翌年鎌倉に帰還しました。1331年（元弘元年）の元弘の乱では、当初は鎌倉幕府軍として参戦しましたが、幕府滅亡後は、幕府から流罪となっていた万里小路藤房を助けて上洛し、後醍醐天皇に仕えました。この際に、後醍醐天皇の諱である「尊治」の一字を賜り、「治久」と改名しました。

その後、足利尊氏が後醍醐天皇の建武政権から離反すると、治久は南朝側に与しました。1336年（延元元年/建武3年）には、常陸国の瓜連城を拠点に、楠木正家と共に、佐竹氏などの北朝勢力と戦いました。1338年（延元3年/暦応元年）には、北畠親房を小田城に迎えましたが、足利尊氏の命を受けた高師冬の攻撃を受け、1341年（興国2年/暦応4年）には北朝に降伏することを余儀なくされました。以後は北朝方として、高師冬に従い、関城・大宝城の攻略に加わりました。

1353年（正平7年/文和元年）12月17日、治久は死去しました。法号は妙光院索准覚翁。跡を子の小田孝朝が継ぎました。

参考文献

安田元久 編『鎌倉・室町人名事典』（コンパクト）新人物往来社、1990年。
紺戸淳「武家社会における加冠と一字付与の政治性について」『中央史学』二、1979年。

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