楠木正家

楠木正家（くすのき まさいえ）

楠木正家は、南北朝時代に活躍した武将です。通称は左近蔵人。楠木正成の親族として知られています。死後、正四位を追贈されました。延元の乱において、延元元年/建武3年（1336年）2月から12月にかけて、常陸国久慈郡（現在の茨城県那珂市瓜連）の瓜連城を拠点とし、足利方についた佐竹氏と激しい戦いを繰り広げました。

生涯

建武2年（1335年）11月、後醍醐天皇と足利尊氏の対立が決定的なものとなり、延元の乱が勃発すると、正家も楠木氏の棟梁である楠木正成に従い、後醍醐天皇方として戦うことになります。

正家は正成の代官として常陸国へ派遣され、建武3年（1336年）2月6日、足利方についた佐竹貞義の息子である佐竹義直・佐竹義冬と交戦し、義冬を討ち取るという戦果を挙げました（『常陸密蔵院古文書』所収『佐竹貞義軍忠状　建武三年九月二十八日』）。

同時期、西国においても2月11日の豊島河原の戦いで足利尊氏が新田義貞・楠木正成に敗れ、九州へ敗走。これにより、戦況は一時的に後醍醐天皇側に有利に傾きます。

2月25日、佐竹氏の一族である佐竹幸乙丸が後醍醐天皇側に寝返り、常陸国久慈郡の瓜連城に籠城していた正家に加勢します（『薬王院文書』所収『佐竹幸乙丸著到状　延元々年五月四日』）。

その後、正家は那珂通辰ら那珂・川野辺氏一族、広橋経泰、大掾高幹、長岡宣政ら大掾氏一族、そして千葉氏一族の相馬胤平といった武将たちと共に戦いました。

しかし、九州で勢力を盛り返した足利尊氏が本州に舞い戻り、5月25日の湊川の戦いで楠木氏の惣領である正成が戦死すると、戦況は一転します。7月から8月にかけては、足利方の相馬胤頼や伊賀盛光らが常陸国へ援軍として駆けつけ、楠木正家は苦戦を強いられることとなりました。

そして、12月11日、ついに瓜連城は陥落（『飯野八幡社古文書』所収『伊賀式部三郎盛光軍忠状　建武三年十二月日』）。その後の正家の消息は明らかになっていません。

大正3年（1914年）11月、正家はその功績を認められ、正四位を追贈されました。

『太平記』における記述

軍記物語である『太平記』（流布本）巻26「正行吉野へ参る事」には、楠木正行（正成の嫡男、通称小楠公）の部下として「楠将監」という人物が登場します。劇中の描写から、正平3年/貞和4年（1348年）1月5日の四條畷の戦いで正行と共に戦死したと考えられています。ただし、『太平記』の写本の系統によっては記述が異なり、毛利本では「石楠将監西阿」、『参考太平記』では「楠将監西河」という人物名で登場し、天正本においては楠将監自体が登場しません。

墓所

伝説によれば、正成の曾孫である楠木正家が秋田県仙北郡大沢郷村に入り、出羽守を自称して城を築いたとされています。その後、由利本荘内越に移り住み、打越氏（由利十二頭の一つ）を名乗ったと伝えられています。現在の秋田県由利本荘市大内地区岩谷には、「正四位上副将軍楠出羽守橘朝臣正家之墓」と刻まれた墓が建てられています。秋田市内には伝・万里小路藤房墓も存在し、南朝方の勢力も及んでいたことから、正家がこの方面に派遣された可能性も否定できませんが、墓以外の確たる証拠は見つかっていません。

また、大阪府四條畷市の四條畷神社では、主祭神である楠木正行に付き従った二十四将の一人として、「楠左近将監正家」が息子（名称不明）と共に祀られています。

参考文献

（参考文献リストは省略）

関連項目

楠木氏
楠木正成
楠木正行
* 四條畷神社

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