小石原焼

小石原焼（こいしわらやき）

小石原焼は、福岡県朝倉郡東峰村で製作されている陶器です。その特徴は、日用雑器としての使いやすさと、独特の装飾技法にあります。

歴史

小石原焼の歴史は、江戸時代前期の1662年（寛文2年）に遡ります。福岡藩の藩主であった黒田光之が、肥前国伊万里から陶工を招き、窯を開いたことが始まりとされています。その後、1669年（寛文9年）頃から、同じ地域で茶陶を製作していた高取焼との技術交流が盛んになり、陶器としての発展を遂げました。

特徴

小石原焼の最大の特徴は、ロクロを回転させながら、刃先や刷毛などの道具を用いて、器に規則的な幾何学模様を施す技法です。具体的な技法としては、以下のものがあります。

刷毛目（はけめ）: 化粧土を刷毛で塗りつける技法
飛び鉋（とびかんな）: 特殊な工具で表面を削る技法
櫛描き（くしがき）: 櫛状の道具で模様を描く技法
指描き（ゆびがき）: 指先で模様を描く技法
流し掛け（ながしかけ）: 釉薬を流し掛ける技法
打ち掛け（うちかけ）: 釉薬を打ち付ける技法

これらの技法を組み合わせることで、多様で美しい模様が生み出されます。

民藝運動との関わり

小石原焼は、民藝運動の提唱者である柳宗悦によって見出され、その美しさが広く知られるようになりました。柳宗悦が小鹿田焼に注目した後、そのルーツである小石原焼も注目を集めるようになります。1954年（昭和29年）には、柳宗悦自身やバーナード・リーチらが小石原を訪れ、「用の美の極致である」と絶賛しました。この評価が、小石原焼が全国的に知られるきっかけとなりました。

1958年（昭和33年）には、ブリュッセル万国博覧会日本館に出品され、グランプリを受賞。1961年（昭和36年）には、日本工芸館小石原分館（現在の小石原工芸館）が設立され、その発展を後押ししました。そして1975年（昭和50年）には、陶磁器として日本で初めて伝統的工芸品に指定されています。

現在の小石原焼

2020年（令和2年）現在、小石原には44軒の窯元があります。そのうちの9軒と東峰村商工会が協力し、「小石原ポタリー」という新しいブランドを2008年（平成20年）に立ち上げました。このブランドでは、サイズや形を規格化し、厳格な検品を通じて品質を管理しています。模様は窯元間で競作することで、多様なデザインが生み出されています。

小鹿田焼との関係

小石原焼と小鹿田焼は、深い繋がりを持っています。江戸時代中期に、小石原焼の陶工であった柳瀬三右衛門が、黒木十兵衛の招きに応じて小鹿田村（現在の大分県日田市）に小石原焼の技術を伝えました。その結果、小鹿田焼が誕生し、現在では兄弟窯として知られています。現在も小鹿田には柳瀬三右衛門の子孫が窯元として残っており、伝統を守り続けています。

小石原焼は、その歴史と技術、そして美しさによって、日本の陶芸文化において重要な位置を占めています。

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