小鹿田焼

小鹿田焼（おんたやき）

小鹿田焼は、大分県日田市の山間にある皿山地区で作られる陶器です。江戸時代中期に始まり、現在も機械を使わず、手作業でその伝統が受け継がれています。小鹿田とはこの集落の通称で、2024年現在、9軒の窯元が小鹿田焼を作り続けています。

歴史と特徴

小鹿田焼は、1705年または1737年頃、日田の代官が領内の生活雑器の需要に応えるため、小石原（現在の福岡県）から陶工を招いて始まったとされています。その技法は小石原焼の影響を強く受けており、朝鮮式の登り窯を使用し、飛び鉋、刷毛目、櫛描きなどの道具で幾何学的な紋様を施すのが特徴です。釉薬は、原料によって緑、飴色、黒の三色が主で、打ち掛けや流し掛けといった技法が用いられます。

小鹿田の土は、他の陶器産地と比べて扱いにくい黄褐色の粘土ですが、乾燥、粉砕、唐臼での搗き作業を経て、時間をかけて陶土へと仕上げられます。この唐臼は、水力を利用して陶土を搗く独特の道具で、その「ギィ」「ドン」という音は「日本の音風景100選」にも選ばれています。

小鹿田焼の製作は、各窯元が家族経営で行っており、土練りや成型は男性が、釉薬掛けや窯入れは女性が担当することが多いです。技術は後継者のみに一子相伝で伝えられてきました。自然条件や販路の制約から、生産規模は限られており、手仕事による家族経営が維持されています。

民藝運動を提唱した柳宗悦は、小鹿田焼の美しさに魅了され、その価値を世に広めました。また、イギリスの陶芸家バーナード・リーチもこの地を訪れ作陶したことで、小鹿田焼は国内外に知られるようになりました。

文化財としての価値

1995年には、小鹿田焼の陶芸技法が国の重要無形文化財に指定され、2008年には地区全体が重要文化的景観として選定されました。これは、小石原から伝わった伝統技法が、長子相続によって守られてきたこと、また、各窯元が共同で土採りを行ったり、作品に個人銘を入れないなど、小鹿田焼の品質とイメージを維持する取り組みを続けてきたことが評価されたためです。

近年の状況

2017年の豪雨で、唐臼をはじめとする生産設備が大きな被害を受け、陶土の採掘も困難になりました。しかし、復旧作業が進められ、2018年からは「小鹿田焼民陶祭」も再開されました。その後も豪雨被害に見舞われましたが、2024年には5年ぶりに民陶祭が開催されました。

小鹿田焼の里は、伝統的な陶芸技術と美しい自然が調和した、貴重な文化的景観を保ち続けています。その風景は、訪れる人々に癒しと感動を与え続けています。

窯元について

小鹿田焼の窯元は、柳瀬家、黒木家、坂本家といった、陶工を招いた家系の子孫によって運営されています。集落の中心には、複数の窯元が共同で使用する登り窯があります。

文化財

小鹿田焼の技術は、長子相続によって継承されており、外部からの弟子を取ることはありません。この伝統的な継承方法が、重要無形文化財に指定される大きな理由となりました。また、皿山地区と池ノ鶴地区は、重要文化的景観として選定されています。

脚注

小鹿田焼は、その歴史と伝統、そして美しい景色とともに、これからも人々を魅了し続けるでしょう。

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