小笠原信嶺

小笠原信嶺（おがさわら のぶみね）

小笠原信嶺は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、信濃国伊那郡の松尾小笠原氏の当主であり、松尾城主として知られています。通称は十郎三郎、掃部大夫。

生涯

天文16年（1547年）、伊那小笠原氏出身の小笠原信貴の長男として生まれました。幼少期には甲府へ人質として送られましたが、父と同様に武田信玄に仕え、信濃先方衆として活動しました。永禄末年頃には家督を継承し、松尾小笠原氏の当主となりました。永禄5年（1562年）には、所領を巡り対立していた飯田城主の坂西永忠を木曽郡へ追放する事件を起こしています。

元亀3年（1572年）には、徳川方の国衆に対して調略を行うなど、武田氏の勢力拡大に貢献しました。元亀4年（1573年）には武田勝頼に仕え、三河長篠城への在番を命じられ、井伊谷を与えられました。同年7月には徳川家康が長篠城を包囲したため、信嶺は援軍として派遣されますが、最終的には長篠城を放棄して退却しています。天正3年（1575年）には、勝頼の三河侵攻に従い、足助城などを攻撃し、野田城から菅沼定盈を駆逐しました。続けて二連木城を攻略し、吉田城を攻撃しましたが、長篠の戦いで武田軍が敗北すると信濃へ撤退しました。天正8年（1580年）には駿河三枚橋城の在番を務めています。

天正10年（1582年）の甲州征伐では、織田信長に帰属し、高遠城攻めに参加しました。この信嶺の離反に対し、勝頼は人質であった信嶺の母を処刑しています。信嶺は同年3月に信長に謁見し、旧領を安堵されました。本能寺の変後には、かつて自分を暗殺しようとした飯田城主の毛利長秀を討とうとしますが、長秀は信嶺の正室を引き渡して逃亡しました。天正壬午の乱では、徳川家康に属し、酒井忠次の家臣として信濃・甲斐を転戦しました。長久手の戦いでは小牧の陣営を守備し、小田原征伐にも出陣しています。これらの功績により、松尾城などの知行を安堵され、下条頼安を娘と縁組させ、支配力を強化しました。

天正18年（1590年）、家康が関東に入部すると、武蔵児玉郡本庄に1万石を与えられ、本庄城主となりました。本庄氏時代の城を廃し、新たに城を築き、城下町を整備しました。翌年には、夫人の兄である救山宗温を招き、開善寺を建立しています。豊臣秀吉の朝鮮出兵にも参加し、伏見城の築城工事にも人足を率いて参加しました。慶長3年（1598年）、江戸で死去。享年52歳。家督は養嗣子の小笠原信之が継ぎました。

信嶺は、戦国時代の激動の中で、巧みに状況を判断し、自らの家を守り抜いた武将と言えるでしょう。武田氏、織田氏、徳川氏と主君を変えながらも、それぞれの時代で重要な役割を果たしました。また、本庄藩の藩祖として、城と城下町の整備に尽力し、その基礎を築きました。

脚注

「寛政重修諸家譜 巻第195」
『戦国人名辞典』吉川弘文館 2006年
今井尭「小笠原系図」『日本史総覧』 3（中世 2）、新人物往来社、1984年。
平山優「小笠原信嶺」 柴辻俊六・平山優・黒田基樹・丸島和洋編『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年

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