広電天満橋

広電天満橋：広島の街を見守る歴史的電車専用橋

広島電鉄本線の路線で、広島市中心部を流れる天満川に架かる広電天満橋は、市内線唯一の複線電車専用橋として知られています。この橋は単なる交通手段以上の存在感を持ち、広島の歴史と深く関わってきた重要な建造物なのです。

天満川に架かる鉄路

広電天満橋は、幅1.7メートルの歩道が両側に設置されているのが特徴です。東詰には広電小網町停留場、西側には天満町停留場があり、多くの市民の足として利用されています。周辺には、上流側に天満橋（広島県道265号伴広島線）、下流側に緑大橋（広島市道比治山庚午線）といった道路橋も架かっており、交通の要衝となっています。なお、資料によっては「天満町電車専用橋」や「天満町鉄橋」といった名称も用いられています。

激動の時代を生き抜いた橋

広電天満橋の歴史は、1912年（大正元年）にさかのぼります。この年、相生橋から己斐（現在の広電西広島）間が開業し、広電本線が全線開通。それに伴い、現在の位置に天満町鉄橋が架けられました。当初は歩道がなく、単線の軌道のみでした。車両や歩行者は、当時の主要幹線道路であった天満橋を利用していました。

広電開業当初は、市内を流れる川にはすべて電車専用橋が架けられていましたが、戦前までに御幸橋、荒神橋、そして相生橋は道路と軌道併用橋に架け替えられました。

1945年（昭和20年）8月6日、広島市への原子爆弾投下。爆心地からわずか1.05キロメートルという至近距離に位置していた広電天満橋は、爆風により桁が歪み、枕木も数本焼ける被害を受けましたが、落橋は免れました。一方、上流側の天満橋は火災により激しく燃え上がり、多くの避難民が、危険を冒して広電天満橋を渡り、西へ逃げていったという記録が残っています。

同年9月の枕崎台風と10月の水害による増水は、天満川に甚大な被害をもたらしました。最上流の横川橋を残し、天満町鉄橋を含む多くの橋が流失してしまいました。

戦後の復興と新たな姿

戦後、戦災からの復興事業が進められる中、広電の電車専用橋は次々と道路併用橋に架け替えられていきました。広電天満橋も一時的に木造の電車専用橋に架け替えられましたが、1969年（昭和44年）に現在の、歩道付きの電車専用橋へと生まれ変わりました。

現在も続く役割

今日、広電天満橋は、広島の街の重要な交通インフラとして、そして歴史の生き証人として、人々の生活を支え続けています。その姿は、広島の人々の不屈の精神と、街の復興の歴史を物語っています。

関連情報

日本の橋一覧
広電本線筋の橋：荒神橋（猿猴川）、稲荷大橋（京橋川）、相生橋（旧太田川）、広電天満橋（天満川）、新己斐橋（太田川放水路）
広島原爆戦災誌 第二巻第二編 (PDF) - 広島市
運転席から見る広電沿線の風景 - 広島電鉄

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