小西誠

小西誠：反戦自衛官から社会批評家へ

小西誠（こにしまこと）は、1949年3月5日、宮崎県串間市に生まれました。中学卒業後、航空自衛隊に入隊。佐渡分屯基地に配属されます。在隊中、法政大学法学部の通信課程で学び、全共闘の学生たちと交流を深めました。学生運動の思想には共感しなかったものの、「自己否定」などの影響を受け、自衛隊内部の民主化を志すようになります。

反戦活動と逮捕

1970年の安保闘争を前に、自衛隊の治安出動訓練が開始されると、小西はこれに反対。佐渡分屯基地内で反戦ビラを配布し、全隊員の前で訓練反対を表明して逮捕されます。1969年11月22日、自衛隊法違反（煽動罪）で起訴。この裁判は、戦後初の自衛官による政治裁判として大きな注目を集めました。弁護団には、憲法学者の江橋崇、星野安三郎や軍事評論家の藤井治夫らが加わり、自衛隊や自衛隊法の違憲性が争点となりました。

裁判とその後

新潟地方裁判所は1975年、検察側の証明不十分として小西に無罪判決を言い渡しますが、憲法判断は回避されました。東京高等裁判所での控訴審では審理不十分として差し戻され、1981年の差し戻し審で「小西の行為は言論の自由の範囲内」として再び無罪となり、確定しました。一方、小西は同時期に懲戒免職処分を受けており、復職を求めて裁判を起こしましたが、1997年に却下されています。

市ヶ谷兵士委員会と人権ホットライン

裁判中から小西は自衛隊員の組織化運動を続け、1981年には市ヶ谷兵士委員会を立ち上げ、自衛隊内の民主化運動を推進しました。また、イラク反戦運動が起こると、「米兵・自衛官人権ホットライン」を設立。現在も事務局長として、自衛官の人権相談に応じています。このホットラインは、自衛隊内のパワハラ、いじめ、退職強要などの相談に対応しており、多くの自衛隊員から頼りにされています。

社会批評社と出版活動

1990年、小西は出版社「社会批評社」を設立。軍事問題だけでなく、新左翼運動における「内ゲバ」の犯罪性を批判し、その一掃を目指した出版活動を展開しています。近年は平和問題にも注力し、沖縄やアジア太平洋戦争の戦跡調査にも力を入れています。また、政府による沖縄・南西諸島の要塞化計画にも警鐘を鳴らし、その危険性を訴えています。

主な著作

小西誠は、自らの経験と研究に基づき、数多くの著作を発表しています。

『反戦自衛官』(1970年)
『自衛隊の兵士運動』(1978年)
『マルクス主義軍事論入門』(1983年)
『隊友よ、侵略の銃をとるな』(1989年)
『自衛隊の対テロ作戦』(2002年)
『日米安保再編と沖縄』(2010年)
『サイパン&テニアン戦跡完全ガイド』(2011年)
『グアム戦跡完全ガイド』(2011年)
『自衛隊この国営ブラック企業』(2014年)
『要塞化する琉球弧』(2019年)
* 『ミサイル攻撃基地化する琉球列島』(2021年)

その他、共著も多数あります。

自衛官人権ホットライン相談室

2003年5月に開設された「米兵・自衛官人権ホットライン」は、後に「自衛官人権ホットライン」に改称されました。瀬戸内寂聴、いいだももなどが発起人を務め、元自衛官や現役自衛官が、隊内の人権問題相談に応じています。自衛隊内部にも相談機関はありますが、相談内容が上官に伝わるケースがあるため、独立した外部機関であるホットラインが重要な役割を果たしています。

まとめ

小西誠は、自衛隊での経験を基に、反戦運動、自衛隊内部の民主化運動、そして人権問題に取り組んできました。彼の活動は、現代社会における軍事、平和、人権問題について深く考えるきっかけを与えてくれます。また、出版活動を通じて、これらの問題に対する多角的な視点を提供し続けています。

もう一度検索