小説吉田学校

小説吉田学校

『小説吉田学校』は日本の政治史を背景にした実録政治小説で、戸川猪佐武によって執筆されました。この作品は、占領時代の吉田茂内閣から鈴木善幸内閣までの政治的闘争を中心に、保守政党の権力争いとその成果に焦点を当てています。

概要

本作は、1971年から1980年にかけて雑誌連載され、その後、流動出版から第7部までが刊行されました。1981年に角川文庫版が出され、続く第8部は新たに書き下ろされて完結となります。全8巻は2001年に学陽書房の人物文庫版として再出版されています。この小説は、政治の表と裏、特に政治家としての人間性とその行動の関係を深く掘り下げています。戸川は「小説という形を取ってあえて評伝にしなかった」と語り、個々の政治家の個性が行動様式に与える影響を明らかにしているのです。

続編としては『小説 永田町の争闘』や『昭和の宰相』があり、政治の背景とその時代の人物像を描写しています。

構成

第1部 「保守本流」

ワンマン宰相の吉田茂が、彼の弟子たちである池田勇人や佐藤栄作と共に、日本の独立を果たす過程と、鳩山一郎との権力争いを描写しています。

第2部 「党人山脈」

鳩山派の三木武吉や岸信介ら保守政治家たちの姿に焦点を当て、鳩山内閣から池田内閣までの政治的動きを描写しています。

第3部 「角福火山」

田中角栄と福田赳夫の間に繰り広げられる権力闘争を中心に、佐藤内閣末期から田中内閣の成立までを描いています。

第4部 「金脈政変」

田中金脈問題をテーマにして、三木武夫内閣の誕生までの経緯を 詳細に紐解いています。

第5部 「保守新流」

ロッキード事件による田中逮捕後の政局を背景に、三木内閣の危機を描いています。

第6部 「田中軍団」

刑事被告人となった田中が総裁選で大平正芳内閣を樹立するまでの道のりを追っています。

第7部 「四十日戦争」

衆議院選挙での大角主流派と三福中非主流派の対立が描かれています。

第8部 「保守回生」

大平総理の急死を受け、自民党が衆参同時選挙で圧勝する過程を描いています。

映画化

1983年には、映画『小説吉田学校』が公開され、原作の第一部が基にされています。フィルムリンク・インターナショナルが制作し、東宝が配給を行いました。また、ストーリーはモノクロとカラーで描かれ、吉田茂と三木武吉に焦点を当てています。

サウンドトラックとテレビドラマ

音楽は川村栄二が担当し、主題歌には堀内孝雄の「少年達よ」が使用されています。映画公開日と同日には、テレビドラマ『吉田茂』も放送され、戦後の日本と吉田の生涯を描きました。

漫画化作品

漫画版も存在し、戸川の没後、さいとう・たかをが手掛けた『劇画・小説吉田学校』が1988年から出版されました。これに続く形で新たな改訂版も発表されています。

このように、『小説吉田学校』は、日本の政治に関心のある人々に深い洞察を提供する作品であり、政治家の個性と行動がいかに纏わり合うかを知る上で欠かせない一冊です。

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