戸川猪佐武

戸川 猪佐武について

戸川 猪佐武（とがわ いさむ）は、1923年12月16日に神奈川県平塚市で生まれ、1983年3月19日に急死するまで、日本の政治評論家・作家として名を馳せました。彼の父親は小説家で平塚市長を務めた戸川貞雄、また弟は小説家の菊村到という背景を持っています。

学歴と職業経歴

戸川は旧制湘南中学を卒業後、早稲田大学政治経済学部に進学しますが、その後の徴兵検査で病気が発覚し、入隊が延期となりました。戦後復学し、無事に卒業した後の1947年、読売新聞に入社し政治部記者になりました。彼は数多くの政治家に取材し、著名な特派員としても活動。さらに、河野謙三からの依頼で父の平塚市長選挙を支援し成功を収めます。

1962年、読売新聞を退社し、政治評論家として独立。TBSの『JNNニュースコープ』で初代メインキャスターを務め、テレビ界にも進出します。続いて1963年には自身の地元、旧神奈川3区から無所属で衆議院選挙に立候補するも落選。これを機に創作活動に重点を置くようになります。

文学と評論

彼の代表作は実録政治小説『小説吉田学校』で、これは吉田茂から鈴木善幸に至る保守政界の内幕を描き出しています。また、この作品は大ヒットとなり、戸川は大きな名声を得ました。後には『小説吉田茂』や『小説三木武吉』といった作品も執筆しました。戸川が小説という形をとった理由は、政治家の行動はそのパーソナリティに支配されているとの信念から、彼らの人間性を描くことで行動の理由を理解しやすくするためだといいます。

晩年と死

1983年、映画化された『小説吉田学校』の試写会や竹下登のパーティに参加した直後、急病に襲われ59歳で急逝しました。彼の死は多くの衝撃を与え、通夜には当時の首相・中曽根康弘や元首相・田中角栄など多くの著名人が参列しました。死因は最初は脳出血とされましたが、後に持病の不整脈による急性心不全とされました。また、戸川の弟子である牧太郎によると、彼は試写会の後にホテルで亡くなったとも伝えられています。

政治的立場と影響

戸川は記者時代の人脈を持ち、保守派を支持する評論を行っていました。特に地元の河野一郎一族や吉田茂との関係が深く、政治的な論評での影響力を持ち続けました。彼の作品は、実際には史実を基にしたノンフィクションとしての側面を持ち、保守派や政治家に対する深い洞察を提供しています。

主な著作

彼は多岐にわたる著作を残し、その中には『昭和現代史 激動する戦後期の記録』や『小説吉田学校』などがあります。特に『小説吉田学校』は全8巻に及ぶ大作として、その内容が高く評価されています。

戸川猪佐武は、戦後日本の政治や文化の発展に影響を与え、独自の視点からの政治分析でその名を歴史に刻みました。

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