小金井ごみ問題

小金井ごみ問題とは

小金井ごみ問題は、東京都小金井市におけるごみ処理を巡る長年の紛争です。この問題は、1985年に二枚橋処理場の老朽化と処理能力の限界が明らかになったことから始まり、2020年に新たなごみ処理施設が稼働するまで、小金井市を大きく揺るがしました。

問題の背景

1957年、小金井市は調布市、府中市とともに二枚橋衛生組合を設立し、二枚橋焼却場でごみ処理を行っていました。しかし、1980年代に入り、施設の老朽化が深刻化。建て替え計画が浮上しましたが、焼却場周辺の住民から反対運動が起こり、計画は頓挫しました。小金井市議会は、焼却場の改築と同時に処理場の分散を求める「第2工場論」を決議しましたが、これが後の混乱の火種となります。

周辺自治体との対立

小金井市の一方的な決議に対し、他の2市は反発。2004年には二枚橋衛生組合が解散し、調布市と府中市はそれぞれ別の組合に加入しました。小金井市は国分寺市と共同で新処理場を建設する計画を立てましたが、建設候補地の選定は難航。2007年に二枚橋焼却場が廃止された後は、周辺自治体に一時的にごみ処理を委託せざるを得ない状況となりました。

小金井市は、市内にある複数の場所を候補地として検討しましたが、いずれも周辺住民の反対や東京都の許可が得られず、新処理場の建設は進みませんでした。特に、二枚橋跡地への再建設は、既に都市計画を進めていた調布市の反対もあり、実現しませんでした。

市長交代と混乱

2011年、小金井市長選挙で、ごみ処理委託費を「無駄遣い」と批判する佐藤和雄氏が当選。これに対し、ごみを受け入れていた周辺自治体は猛反発し、ごみ受け入れを拒否しました。佐藤市長は発言を撤回し謝罪しましたが、周辺自治体との信頼関係は回復せず、市内のごみ収集が停止する危機に直面しました。混乱の責任を取り、佐藤市長は辞任。後任の市長選挙では、前市長である稲葉孝彦氏が当選し、事態の収拾が図られました。

新しいごみ処理施設の稼働

その後、小金井市は二枚橋跡地への建設を断念し、日野市、国分寺市と共同で、日野市内に新たなごみ処理施設を建設する計画を立てました。この計画に対し、日野市民の一部から反対運動が起こりましたが、2020年4月に「浅川清流環境組合」として新しいごみ処理施設が稼働を開始しました。

年表

1985年：小金井市議会が「第2工場論」を決議
2004年5月：国分寺市へ共同処理を申し入れ
2007年3月：二枚橋処理場廃止
2009年2月：新処理場建設地確保の約束を延期
2010年3月：二枚橋衛生組合解散
2010年4月：二枚橋焼却場用地に新施設建設を決定
2011年4月：佐藤和雄氏が市長当選、ごみ問題で混乱
2011年11月：佐藤市長辞任、稲葉孝彦氏が市長に返り咲き
2012年4月：二枚橋焼却場跡地でのごみ共同処理を断念
2014年1月：小金井市、日野市、国分寺市が共同処理計画を締結
2015年1月：日野市内のごみ処理施設建設に反対運動
2015年7月：一部事務組合「浅川清流環境組合」を設立
2016年11月：日立造船が新可燃ごみ処理施設整備・運営事業を受注
2016年8月：二枚橋焼却場の跡地を小金井市が買収
2020年4月：浅川清流環境組合可燃ごみ処理施設が稼働開始

教訓

小金井ごみ問題は、ごみ処理施設の建設がいかに難しいかを物語っています。住民の理解を得ることの重要性、周辺自治体との協力体制、長期的な視点での計画策定、などが不可欠であることが、この問題から学べる教訓です。

参考文献

石川禎昭『新ごみ教養学なんでもQ&A』中央法規、2000年

関連項目

二枚橋衛生組合
東京ゴミ戦争
NIMBY
廃棄物の処理及び清掃に関する法律

外部リンク

“自前処理場 小金井の難題”. 読売新聞
小金井市のごみ問題 - コトバンク

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