小金原開墾

小金原開墾とは

小金原開墾は、江戸時代に存在した小金牧と佐倉牧という二つの軍馬育成牧場を、明治初期に開墾した事業を指します。これらの牧は、現在の千葉県北部に位置しており、江戸時代には幕府の重要な軍馬供給源でした。しかし、明治維新後、これらの牧は開墾され、新たな歴史を歩み始めることになります。

開墾の背景

江戸時代、小金牧と佐倉牧は、それぞれ複数の牧から構成されていました。

小金牧
上野牧（かみのまき、柏市豊四季・流山市東部）
高田台牧（たかだだいまき、柏市十余二）
中野牧（なかのまき、鎌ヶ谷市初富・松戸市五香六実・柏市・白井市）
下野牧（しものまき、船橋市二和三咲・鎌ヶ谷市・八千代市・習志野市）
印西牧（いんざいまき、白井市十余一・印西市）

佐倉牧
油田牧（あぶらたまき、香取市九美上等）
矢作牧（やはぎまき、成田市十余三・成田市大栄十余三・多古町十余三・香取市等）
取香牧（とっこうまき、成田市）
内野牧（うちのまき、富里市七栄等）
高野牧（こうやまき、富里市十倉等）
柳沢牧（やなぎさわまき、八街市八街等）
小間子牧（こまごまき、八街市南部）

これらの牧は、江戸時代初期から享保期にかけて、小金宿（現在の北小金）に住んでいた牧士頭によって管理され、小金原と総称されていました。明治維新後、東京の士族とその使用人が職を失い、生活に困窮する中で、政府は彼らを救済し、社会を安定させるため、小金原の開墾を計画しました。また、東京周辺の食糧増産と、西欧の近代的な育馬技術導入も、開墾の目的でした。

開墾の開始と開墾地名

1869年（明治2年）、東京府管轄で開墾が開始されました。開墾地には、開墾入植の順に従ったとされる地名が付けられました。

1. 初富（はつとみ、中野牧・鎌ケ谷市初富）
2. 二和（ふたわ、下野牧・船橋市二和）
3. 三咲（みさき、下野牧・船橋市三咲）
4. 豊四季（とよしき、上野牧・柏市豊四季）
5. 五香（ごこう、中野牧・松戸市五香）
6. 六実（むつみ、中野牧・松戸市六実）
7. 七栄（ななえ、内野牧・富里市七栄）
8. 八街（やちまた、柳沢牧・八街市八街）
9. 九美上（くみあげ、油田牧・香取市九美上）
10. 十倉（とくら、高野牧・富里市十倉）
11. 十余一（とよいち、印西牧・白井市十余一）
12. 十余二（とよふた、高田台牧・柏市十余二）
13. 十余三（とよみ、矢作牧・成田市十余三・大栄十余三・多古町十余三）

開墾局の現地事務所は初富に置かれ、地名は北島秀朝によって命名されました。しかし、実際には入植順ではなく、入植計画順に地名が付けられたという研究もあります。

開墾後の状況

開墾後の土地は、入植者と開墾を取り仕切った三井組などの開墾会社、およびその出資者に、出資額に応じて与えられるはずでした。しかし、実際には、開墾会社が力を持ち、入植者からの搾取が横行しました。会社は『東京授産場』を設け、入植者を訓練しましたが、入植後、会社は入植者にノルマを課し、達成できない場合は懲罰房に入れるなどの無法な行為も行いました。

1872年（明治5年）に開墾会社が解散した際、三井などの画策により、多くの非出資入植者には耕作権しか与えられず、少数の大地主、少数の地主、多数の小作農という構図が生まれました。また、非開墾地は公有地となり、軍用地や公共施設用地の一部となったほか、日露戦争の戦費調達のために払い下げられることもありました。三井も多くの土地を取得しました。

東京の窮民だけでは開墾が進まなかったため、近隣の農民も入植者に加わりました。しかし、近隣農民が持っていた薪炭林などの権利をめぐり、争議も発生しました。

1869年から1872年の間に、多くの人々が開墾地に移住しましたが、1922年の調査によると、開墾当初の移住者で残ったのはごく一部で、ほとんどが開墾のための金品貸与を完済できず、小作農となっていました。

開墾とその後

開墾地では、ほぼ集落ごとに神社が建てられました。また、地理的な条件などから、明治以降も牧場や競馬場など、馬に関連する施設が置かれることがありました。現在もいくつかの牧場が残っています。

小金原開墾は、東京府管轄で行われたものの、開墾会社による搾取など、多くの問題を抱えていました。この事業は、地域社会に大きな影響を与え、その後の歴史に深く刻まれることになりました。

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