佐倉牧

佐倉牧（さくらまき）とは

佐倉牧は、江戸時代に下総国（現在の千葉県北部）に存在した広大な牧場群です。具体的には、印旛郡、香取郡、千葉郡、そして上総国の一部（武射郡、山辺郡）にまたがり、広大な範囲で馬が飼育されていました。

起源と発展

佐倉牧の起源は明確ではありませんが、戦国時代後期の天正11年（1583年）に、北条氏政が千葉邦胤に命じて馬牧を設置させたという記録が残っています。このことから、同時期に存在した小金牧よりもやや遅れて設置されたと考えられています。

本格的な整備は江戸幕府開府後の慶長19年（1614年）に行われました。この時、佐倉牧は7つの牧で構成されることになり、「佐倉七牧」と呼ばれるようになりました。その後、享保年間には小宮山杢之進の提言により改革が行われ、小金牧の野馬奉行が管理する4牧と佐倉藩が管理する3牧に分割されました。

最盛期には、隣接する村の数は210、総面積は約17,270ヘクタールにも及び、約3,000頭の馬が放牧されていました。これは、当時の日本における牧場としては非常に大規模なものでした。

佐倉牧の構成

佐倉牧は、大きく分けて佐倉四牧と佐倉三牧の二つに分かれていました。

佐倉四牧

小間子牧（こまごまき）：現在の八街市南部に位置し、約2,760ヘクタール。
取香牧（とっこうまき）：現在の成田市三里塚（成田国際空港）に位置し、約1,750ヘクタール。明治期に開墾されずに残り、下総種畜場、下総牧羊場を経て御料牧場となりました。佐倉牧、小金牧の中で唯一ほぼ全体が残った牧です。
矢作牧（やはぎまき）：現在の成田市・香取市北部に位置し、約3,080ヘクタール。開墾地として「十余三」と命名されました。
油田牧（あぶらたまき）：現在の香取市九美上に位置し、約1,170ヘクタール。国の史跡「下総佐倉油田牧跡」として指定されています。

佐倉三牧

柳沢牧（やなぎさわまき）：現在の八街市北部に位置し、約3,340ヘクタール。
高野牧（こうやまき）：現在の富里市十倉に位置し、約2,960ヘクタール。
内野牧（うちのまき）：現在の富里市七栄に位置し、約2,210ヘクタール。

廃止とその後

佐倉牧は、明治2年（1869年）に廃止されました。しかし、一部は御料牧場として存続し、その跡地は現在の成田空港などにも利用されています。佐倉牧は、江戸時代の牧場経営や馬文化を研究する上で、重要な歴史的遺産となっています。

関連文献

佐倉牧に関する研究は数多く、以下のような文献があります。

『千葉大百科事典』（千葉日報社、1982年3月）
青木更吉『佐倉牧を歩く』崙書房、2007年5月
青木更吉『佐倉牧 続・野馬土手は泣いている』崙書房、2002年5月

関連項目

宮内庁下総[[御料牧場]]
小金牧

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