少女には向かない職業

少女には向かない職業

『少女には向かない職業』は、作家・桜庭一樹によって2005年に発表された長編小説です。家庭環境に苦悩する思春期の少女が、ある特別な出会いをきっかけに内面の変化と危険な企てに巻き込まれていく様子を描いた作品で、ミステリ・フロンティアのラインナップとして東京創元社より刊行されました。後に創元推理文庫版も出版されています。

作品概要

物語の舞台は、山口県にある小さな離島の中学校。ごく普通に見える一人の少女と、クラスで目立たない別の少女が出会うことで、彼女たちの日常は思わぬ方向へと動き始めます。思春期特有の不安定さ、家庭環境の複雑さ、そして善悪の境界線が曖昧になっていく危うさが、静かな筆致の中に描かれています。単なる青春小説に留まらず、サスペンスやミステリの要素を含んだ物語として展開していきます。

あらすじ

中学2年生の大西葵は、離島で暮らす少女です。学校では明るく振る舞い、友人たちとも問題なく過ごしていますが、家庭には大きな悩みを抱えていました。無職で酒浸りの義父と、仕事の疲れから家庭で愚痴をこぼす母との生活は、葵にとって重荷でした。誰にも打ち明けられない苦しみを抱え、葵は日々を過ごしていました。

夏休み初日、葵は幼馴染の男友達である田中颯太と連れだって、本土の下関市へゲームセンターに出かけます。帰り道、島で迷い山羊を見かけた葵は、自らの境遇と重ね合わせたかのように、衝動的に山羊を傷つけてしまいます。その時、「…それぐらいにしておいてやりなよ」と声をかけられた葵が振り返ると、そこにいたのは同級生の宮乃下静香でした。普段はクラスで存在感が薄い静香でしたが、その時の彼女にはどこか異様な雰囲気が漂っていました。静香は唐突に「今、港で水死体が見つかったから見に行かない？」と葵を誘います。

この日を境に、葵と静香の間に奇妙な交流が始まります。静香は図書委員で、読書を好む地味な外見の少女ですが、家庭には複雑な事情を抱えていました。網元だった祖父と従兄の浩一郎との三人暮らしの中で、静香は従兄に祖父の遺産目当てで利用されていることに気づいていました。静香は葵に対し、冗談半分とも本気ともつかない調子で、その従兄を一緒に殺してほしいと持ちかけます。静香の特異な存在に惹かれつつも戸惑う葵。二人の危うい関係は、やがて予測不能な展開へと向かっていきます。

主な登場人物

大西 葵: 中学2年生、13歳。家庭環境に問題を抱えるも、学校では明るく振る舞う少女。内面の苦しみを誰にも明かせずにいたが、静香との出会いを機に変化が訪れる。
宮乃下 静香: 葵の同級生。図書委員。おかっぱの黒髪とメタルフレームの眼鏡が特徴。読書を好み、常に数冊の本を持ち歩いている。一見地味だが、内面に特異な雰囲気を秘める。従兄との問題を抱え、葵を危険な企てに誘う。
田中 颯太: 葵の幼馴染であり、唯一の男友達。ゲームが好き。葵の家庭環境に理解を示し、気にかけている。
宮乃下 浩一郎: 静香の従兄。静香の祖父の遺産を狙い、静香を利用しようとする人物。静香が殺害の対象とする。
サチ & ユキヨ: 葵の友人たち。

書籍情報

単行本: 2005年9月30日発行、東京創元社〈ミステリ・フロンティア〉、ISBN 978-4-488-01719-4
文庫本: 2007年12月28日発行、創元推理文庫、ISBN 978-4-488-47201-6

テレビドラマ

本作は、GyaOのオリジナルドラマとして映像化されました。2006年5月よりネット配信され、全10話が制作されました。2007年2月にはDVDが発売され、2008年1月には桜庭一樹の直木賞受賞を記念して再配信が行われました。

キャスト

大西葵：緑友利恵
宮乃下静香：田島有魅香
大西葵（12年後）：北川弘美
宮乃下静香（12年後）：橘実里
大西明美：鈴木砂羽
田中颯太：森田直幸
竹田ナオ：岡本奈月
サチ：青谷優衣
岡先生：天宮良
杉山弁護士：斎藤洋介
宮乃下三郎：品川徹
渋谷浩二：深水元基
達川良：城田優
夏来：藤谷文子
長沢一樹：池田稔
吉岡修司：小林且弥
竹田朔美：江口のりこ
田中幸子：片桐はいり
泰三の漁師仲間A：諏訪太朗
泰三の漁師仲間B：柄本時生
金物屋主人：上田耕一
薬屋主人：佐藤佐吉
大学教授：宮台真司
先田庄司：渡辺いっけい
宮乃下浩一郎：要潤
大西泰三：萩原聖人

スタッフ

原作：桜庭一樹
企画：山崎公路、東海林秀文
脚本：益子昌一、いながききよたか
撮影：福本淳、宮川幸三
音楽：椎名KAY太
プロデューサー：江幡泰太、佐々木亜希子
演出：高橋陽一郎、川村直紀、河合勇人
制作プロダクション：WILCO Co.,Ltd
製作著作：USEN
主題歌 ：竹仲絵里「スクランブル」
ロケ協力：下関フィルム・コミッション、北九州フィルム・コミッション、山口県下関市

外部リンク

* 少女には向かない職業 - 東京創元社

もう一度検索