尾原勝吉

尾原 勝吉（おばら かつよし）

尾原勝吉（1899年（明治32年）4月1日 - 1981年（昭和56年）3月6日）は、日本の指揮者、ヴァイオリン奏者です。島根県簸川郡久木村（現在の斐川町美南）の出身。

明治大学に進学した尾原は、在学中にヴァイオリンを深く学びました。宮内庁音楽部の山井基清に専門的な指導を受け、技術を習得。ヴァイオリニスト多久寅のもとでも研鑽を積みました。

大学卒業後の1922年（大正11年）、尾原は日本のオーケストラ界の黎明期を牽引した近衛秀麿や山田耕作らとともに、NHK交響楽団の前身にあたる新交響楽団の設立に参画しました。彼は草創期から中心メンバーとして、ヴァイオリン奏者そして指揮者として精力的に活動を展開しました。

新交響楽団での活動と並行し、1923年（大正12年）には母校である明治大学に交響楽団を設立しました。1925年（大正14年）には日露交歓交響管弦楽演奏会に日本側演奏家として参加。ヨゼフ・ケーニヒやニコライ・シフェルブラットといった海外の指導者にも師事し、室内楽では1930年（昭和5年）に日比野愛次らとクリスタル・カルテットを結成しました。

指揮者としての技量をさらに磨くため、尾原は1943年（昭和18年）から一年間、日本交響楽団の常任指揮者であったヨーゼフ・ローゼンシュトックに師事し、本格的に指揮法を学びました。ローゼンシュトック担当のラジオ放送でテスト指揮を行うなど、実践的な経験を積みました。

戦後、日本交響楽団がNHK交響楽団へと改称された後も、尾原は主要な一員として活躍。「ピーターと狼」日本初演指揮、N響の朝日文化賞受賞に際して功労者として表彰、楽団員としての活動30周年記念特別演奏会開催など、その功績は広く認められました。

1957年（昭和32年）、尾原はN響の定年制度により勇退。楽団発展への貢献は多大でした。N響勇退後、彼の情熱は学生オーケストラの指導へと向けられます。東京工業大学、一橋大学など多くの大学で常任指揮者を務め、母校の明治大学をはじめ、お茶の水、聖心女子大学など数多くの学生たちの指導にあたりました。彼は精力的に学生を育成し、合同演奏会を企画・実現するなど、学生音楽活動の振興に尽力しました。こうした長年の功績により、1978年（昭和53年）には勲五等双光旭日章を受章。1977年（昭和52年）には明治大学交響楽団の名誉指揮者となっています。

1981年（昭和56年）に亡くなった後、彼が育てた多くの学生たちの心にその功績は刻まれ、同年9月には指導を受けた五大学のOB・OGにより追悼演奏会が開催されました。

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