尾形憲

尾形憲（おがた けん）

概要

尾形憲は、1923年（大正12年）に生まれ、2017年（平成29年）に逝去した日本の経済学者、平和運動家です。法政大学の名誉教授として、長年にわたり教育経済学の研究と教育に尽力しました。専門分野に加え、平和運動にも積極的に参加し、社会的な問題に対して声を上げ続けました。また、その生涯において、軍人から平和運動家へと転身した特異な経歴を持っています。

生い立ちと軍歴

宮城県で生まれた尾形は、宮城県立第一中学校を経て陸軍予科士官学校、そして陸軍航空士官学校を卒業しました。太平洋戦争終戦時には陸軍中尉の階級にありました。戦後の混乱期の中、尾形は法政大学経済学部（通信制）に入学し、経済学を学び始めます。その後、同大学大学院に進学し、教育経済学を専攻しました。この軍人としての経験が、後の平和運動への活動に影響を与えたと考えられます。

学者としての活動

法政大学大学院で教育経済学を専攻した尾形は、教育問題や大学のあり方について深く考察しました。1982年には、法政大学の全学集会で非核大学宣言をまとめ、翌年からは公開講座『法政平和大学』を開講し、平和教育の普及にも貢献しました。また、教育経済学に関する著書を多数執筆し、学歴社会の問題点や大学の役割について、独自の視点から提言を行いました。

平和運動家としての活動

尾形は、平和運動家としても精力的に活動しました。テロ特措法や海外派兵に反対する市民訴訟の会の世話人代表を務めるなど、具体的な行動を通して平和を訴えました。1995年の第17回参議院議員通常選挙では、環境政党「憲法みどり農の連帯」から東京都選挙区に出馬しましたが、落選しました。その後も、市民団体「連帯」の共同代表として、社会運動に関わり続けました。尾形の平和への強い思いは、彼の著書や講演活動を通じて、多くの人々に影響を与えました。

主な著書

尾形は、その生涯で多数の著書を執筆しました。以下に主な著書を列挙します。

『学歴信仰社会』（時事通信社、1976）
『私立大学-“蟻地獄”のなかから』（日本経済新聞社、1977）
『教育経済論序説-私立大学の財政』（東洋経済新報社、1978）
『学びへの旅立ち-マスプロ授業を越えて』（時事通信社、1981）
『素顔の学生たち-学びとの出会い』（青木書店、1983）
『新しい教育の原理-いま学ぶことの意味を問う』共著（ミネルヴァ書房、1986）
『もうひとつの学校-遠山塾高校から水俣大学まで』（有斐閣、1986）
『新しい教育学』共著（ミネルヴァ書房、1990）
『どうして銀行にお金をあずけるの? 金融のはたらき』（ポプラ社、1990）
『歌と星と山と-ある元職業軍人の“転向”の軌跡〈上〉』（オリジン出版センター、1994）
『歌と星と山と-ある元職業軍人の“転向”の軌跡〈下〉』（オリジン出版センター、1994）
『学歴社会をぶっつぶせ!-大学の空洞化と教育の荒廃を生む学歴主義を撲滅せよ』（BOC出版部、1995）
『わが「平和への船旅」-南十字と安保・沖縄』（第三書館、1997）
『76歳、山の楽しさと恐ろしさ-平和なればこそ』（オリジン出版センター、2011）


これらの著書を通じて、尾形は教育問題、学歴社会、平和といったテーマについて、多角的な視点からの考察を展開しました。特に、自身の軍人としての経験を踏まえた平和への強い思いは、多くの読者に深い感銘を与えました。尾形の活動は、教育と平和という二つの側面から、社会に貢献したと言えるでしょう。

参考文献

kotobank - 尾形憲とは
尾形憲「尾形憲塾22年から」『経済志林』第78巻第1号、法政大学経済学部学会、2010年6月、1-39,図版2p、doi:10.15002/00007009、hdl:10114/6158、ISSN 00229741、NAID 120002738239。


これらの資料は、尾形憲の研究活動や社会活動についてより深く知るための手がかりとなります。

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