尾本安代

尾本 安代

尾本 安代（おもと やすよ）は、日本のバレエ界において、長年にわたり第一線のバレリーナとして活躍し、現在はバレエ指導者としても多大な影響を与えている人物です。生年不詳ながら11月22日生まれ。神奈川県横浜市金沢八景で生まれ育ちました。

バレエとの出会いとキャリアの形成

バレエの世界へ足を踏み入れたのは11歳の時、1963年のことでした。根本美香氏に師事し、バレエの基礎を学び始めます。その後、1968年には根本氏が所属していた谷桃子バレエ団の付属研究所に入所。高校生の頃には、谷桃子氏自身が主演を務める『ジゼル』の公演において、コール・ド・バレエの一員として舞台経験を積んでいます。この時期に培われた経験が、後の飛躍の礎となりました。

1972年に関東学院女子短期大学英文科を卒業すると同時に、谷桃子バレエ団に正式に入団します。

プリマ・バレリーナとしての輝き

谷桃子バレエ団に入団してからは、その才能を開花させ、すぐに同団の主力ダンサーへと成長しました。そして、『白鳥の湖』のオデット＝オディール、『ドン・キホーテ』のキトリやジプシー、そして『ジゼル』のタイトルロール（ジゼル）やミルタといったバレエ作品における重要な大役を次々と任され、見事に踊りこなしました。これらの役柄を通じて、尾本氏は谷桃子バレエ団を代表するプリマ・バレリーナとしての地位を確立し、観客を魅了しました。

海外での研鑽と国際舞台

尾本氏のキャリアにおける大きな転機となったのは、1978年に文化庁在外研修員に選ばれたことです。この機会に、かねてから強い憧れを抱いていたアリシア・アロンソが率いるキューバ国立バレエ団を研修先として選択しました。尾本氏がアロンソに惹かれたのは、「あの年齢（当時）で踊ることの凄さ」と「ヨーロッパのバレリーナとは異なる独特の魅力」を感じ取ったからでした。キューバではアロンソ氏の直接指導を受け、バレエ団員と同様に多くの舞台に出演する機会を得ました。また、この海外研修期間中に、モナコのアカデミー・デュ・ダンセ・クラシークでも更なる研鑽を積んでいます。

1979年に海外研修を終えて帰国してからも、尾本氏は日本国内での舞台活動と並行して、国際的な活躍の場を広げました。パリやナント（フランス）、モナコ、キューバ、イタリア、香港など、世界各国の舞台にゲストとして招聘され、その卓越した舞踊を披露しました。

幅広い活動と受賞歴

尾本氏のレパートリーは、古典的なクラシック作品から、モダンバレエ、そしてコンテンポラリー作品の創作に至るまで、非常に多岐にわたります。ダンサーとしての活躍は高く評価され、数々の栄誉に輝きました。

1973年：東京新聞主催 第30回全国舞踊コンクール バレエ第一部1位（文部大臣奨励賞）
1987年：橘秋子優秀賞
* 1989年：服部智恵子賞

また、1982年には川路明氏の著書『バレエ入門 バレリーナの手紙』で写真モデルを務め、関連するビデオ作品『バレエの基礎レッスン』でもモデルとして出演するなど、バレエの普及活動にも貢献しました。川路氏は尾本氏を「明るさと気力に満ちたダンサー」と評しています。

後進の指導とバレエ界への貢献

現役引退後は、指導者として多くの後進育成に力を注いでいます。谷桃子バレエ団研究所で特別クラス教師を務める他、日本音楽高等学校、東京女子体育大学、お茶の水女子大学といった様々な教育機関で非常勤講師として教鞭をとっています。

さらに、全国舞踊コンクールや全国鎌倉バレエコンクールなど、国内の主要なバレエコンクールにおいて審査員を務めるなど、若手育成やバレエ芸術の振興に深く関わっています。2011年には、NPO法人総合芸術支援協会の理事長に就任し、芸術全般への支援活動にも従事しています。

尾本安代氏は、一人の優れたバレリーナとしてのみならず、指導者、審査員、そして芸術支援者として、日本のバレエ界に多大な貢献を続けています。その豊富な経験と情熱は、今もなお多くの人々に影響を与えています。

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