尾高朝雄

尾高 朝雄について

尾高朝雄（おだか ともお）は1899年1月28日に生まれ、1956年5月15日に亡くなった日本の著名な法学者であり、法哲学の第一人者です。彼は日本学士院の会員でもあり、第3期日本学術会議の副会長を務めました。彼の業績は日本の法哲学の理解を深め、特に「ノモス主権論」における議論で知られています。

1. 経歴の概要

尾高は、漢学者及び銀行家の尾高次郎の三男として、韓国の釜山に生まれました。彼は1916年に東京高等師範学校附属中学校を卒業し、その後、第一高等学校を経て東京帝国大学法学部を卒業しました。当初、外交官を目指しましたが、家族の反対により進路を変更し、京都帝国大学の文学部に進学します。哲学の分野において尊敬される学者である西田幾多郎や米田庄太郎から学ぶ機会を得ました。

1927年、彼は兄と共に東京社会科学研究所を設立し、法哲学者としてのキャリアを築いていきます。京城帝国大学法文学部の教授職を経て、東京大学法学部の教授となり、専門職としての地位を確立しました。彼の留学経験は、1928年からおおよそ3年間にわたり、ドイツやフランス、イギリス、アメリカにおいて数多くの著名な学者から国家学や現象学を学ぶことに貢献しました。

彼の法哲学の研究は、当時の他の法理学者たちとは一線を画しており、実定法の研究者が主流であった日本において初めての本格的な法哲学の専攻者として評価されています。特に、彼と親交があったハンス・ケルゼンからの信任も厚く、彼がドイツを追われた際には京城帝国大学に招聘しようと努力しました。

2. 主な業績と論争

尾高の代表作には『国家構造論』や『実定法秩序論』があり、特に前者はその緻密な法の分析と論理的整理によって高く評価されました。1947年には「国民主権と天皇制」と題した論文を発表し、ノモス主権論を提唱しました。この論文は当時の著名な法学者である宮沢俊義との論争を引き起こし、法解釈の領域における支持を得ることはできなかったものの、彼の考え方が議論の余地を提供しました。

彼は1952年にパリで行われた第7回ユネスコ総会に日本政府代表として参加するなど、国際的にも活動の場を広げました。

3. 最期とその影響

1956年、尾高は歯科治療中にペニシリンアレルギーのためショック症状を起こし、そのまま逝去しました。彼の死は、ペニシリンショックという形で薬害に関する社会問題を浮き彫りにし、日本の薬害問題に関する早期の認識を促しました。現在、彼の墓は文京区の護国寺にあります。

4. 家族と後世への影響

尾高の家族は多彩で、父方の祖父は民営富岡製糸場のトップを務めた殖産家、母方の祖父は実業家の渋沢栄一です。彼には法学者や研究者としての足跡を残した親類が多数います。尾高の妻、咲子は国文学者の芳賀矢一の四女で、彼の学問の伝承にも寄与しました。

5. まとめ

尾高朝雄は彼の死後もなお、日本の法哲学の分野において重要な位置を占めています。彼の研究や業績は後世に多大なる影響を及ぼし、法学教育や哲学的な議論における重要な基盤を形成しました。彼の理念や成果は、現在の法的議論においても参考にされ続けています。

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